狂乱の協奏曲
陵辱の宴が幕を閉じ、ドクター・ピオの神憑りの医術によって『完璧に治療』されたジュリアスの肉体。
昨日までの裂傷は塞がり、彼はまた、あらゆる痛みを十全に知覚できる新鮮な身体へと戻されていた。
そして、本日のメニューは【爪剥ぎ】だ。
「ヒッ……いやだ、止めろ、頼むからもう止めてくれカースッ!!」
「クク……若旦那、暴れると手元が狂って余計な肉まで削いでしまいますよ?」
闇医者がねっとりとした笑みを浮かべ、鉄製の重々しいペンチをカチカチと鳴らす。
冷たい金属がジュリアスの指先をがっちりと掴み、次の瞬間――生爪を根元からベリベリと、容赦なく強引に引き剥がした。
「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ーーーーーッ!!!!!」
薄暗い地下牢に、鼓膜を裂くような絶叫が何度も、何度も響き渡った。
一本、また一本と、血飛沫と共に剥ぎ取られていく指先。
あまりの激痛にジュリアスは白目を剥き、身体を弓なりに反らせて絶叫を上げる。
『本当に効率的で完璧な拷問プランね、カース。爪は時間を置けばまた綺麗に生えてくるわ。肉体的な永久欠損の前に、人体破壊そのものの極限の激痛を味わわせながら、何度でもリピートできるのがこの拷問の最大のメリットよ。ジュリアスも可哀想に、喧嘩を売る相手を致命的に間違えたわね……。……さあ、間髪入れずに、次は【睡眠奪取】といきましょうか?』
脳内の『私』が、次の演目として精神攻撃を提案する。
((ああ、もちろんさ。あいつに安息の時間など一秒たりとも与えるつもりはないよ))
ドクター・ピオが丁寧に爪の治療を終え、壊死を防ぐ薬液を注入すると、すぐさま次のメニューである『睡眠奪取』へと移行した。
今日から三日間、ジュリアスには一睡の猶予も許されない。
僕が教皇の金で買い叩いた私兵たちは、交代制で四六時中地下牢に張り付いた。
ジュリアスが疲弊し、ほんの少しでも目を閉じかけるたびに、耳元で金属板を打ち鳴らす大音量の騒音を浴びせ、あるいは容赦のない拳で全身を殴り飛ばした。
「がはっ……ぁ……っ」
あまりの肉体的・精神的負荷に、気絶するように浅い眠りに落ちようとしても、その都度、容赦なく髪を掴み上げられ、バケツ一杯の氷水を顔面に浴びせられて強制的に叩き起こされる。
「頼む……寝かせてくれ……。もう、何でも言う通りにする、だから殺してくれ……っ、殺してくれえええ!!」
狂乱と衰弱の三日間が過ぎた。
真っ赤に充血した両目で、存在しない影や幻覚に怯え、口から白い泡を吹いてガタガタと生まれたての小鹿のように震えるジュリアス。
かつて『完璧な嫡男』と称された男の、見る影もなく崩壊したその姿の前に、僕は再び、闇医者を伴って静かに現れるのだった。
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