地獄の調律
僕は冷たい一歩を踏み出し、呆然と佇む当代最高の闇医者、ドクター・ピオに向かって冷酷に顎で指示を出した。
「ドクター、あいつを治療しろ。死なせないように、次の『演目』に耐えられるように、完璧に肉体を調律するんだ」
「ククク……仰せのままに、カース様」
闇医者は待ってましたと言わんばかりに下卑た笑みを浮かべ、その白濁した目を怪しく光らせた。
「男たちに無残に裂かれた傷を塞ぎ、我が特製の治癒促進の薬を投与しましょう。明日にはまた、新鮮な痛みと屈辱を隅々まで感じられる、元気な身体に戻してみせますよ。……それが、この男にとっての最大の慈悲ですからな」
ドクター・ピオは不気味に医療器具をカチャカチャと鳴らし、床に転がり意識を失いかけているジュリアスの元へと近づいていく。
((ジュリアス。最初の演目はどうだった?お前が誇り、僕を化け物と見下していたその『完璧な嫡男の身体』は、今や僕への狂信を募らせた男たちの、無残な身代わりの玩具に成り下がった……))
じっとりとした汗と脂、そして血の匂いが充満する空間。
僕は、虚空を見つめたまま焦点の合わない弟の瞳を冷ややかに見下ろす。
((だけど、お前が味わうべき絶望は、まだ始まったばかりなんだ。お前と、お前を愛した父上が僕たちから奪った命と時間の重さ、その身にしっかりと刻み込んでもらうよ――))
『……さあ、ドクターの執刀ショーの始まりね。カース、明日の演目の楽譜はもう頭の中で仕上がっているんでしょ?』
脳内で『私』が、これからの惨劇を予期してゾクゾクとした恐怖と期待が入り混じった声を上げる。
((ああ、完璧なものがね。明日はあいつの誇りを、肉体ごと物理的に削ぎ落としてあげるさ))
僕は、狂気的な熱狂を孕み始めた地下牢の闇の中で、実の弟に次なる『血塗られた旋律』を刻み付けるべく、一片の容赦もない冷徹な瞳で、闇医者の手元を見つめ続けるのだった。
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