悪夢の夜明け
やがて長い夜が明け、地平線から血のように赤い朝日が昇り始めた頃。
静まり返った寝室のベッドの中から、ようやくジュリアスが二日酔いの酷い頭痛に呻きながら、のそりと身体を起こしてきた。
「う……頭が、割れそうだ……。おい、誰か……。水を持ってこい……」
まだ半分夢の中にいるのだろう。
長年の習慣からか、彼は慣れた様子で手早く乱れた髪を纏め、前髪を後ろへと撫でつけた。
じわじわと襲ってくる喉の渇きを潤そうと、寝ぼけた眼をこすりながら、ガラスの水差しがあるサイドテーブルの方へと顔を向けた。
その時だった。
ふと、カーテンの隙間から差し込む朝日の逆光の中に、静かに窓際に佇む人影が、彼の視界に入った。
逆光のせいで、まだこちらの顔ははっきりと見えていない。
ジュリアスは自らの置かれた状況に全く気づかず、完全に油断しきった表情のまま、その影に向かって、溺愛する新妻の愛称をひどく甘えた声で口にした。
「……エッタ、か……? 珍しいな、こんなに早い時間に私の部屋にいるなんて……。体調でも悪いのかい?」
本当に、涙が出るほど滑稽だった。
自分と、お腹の中の我が子の未来のために、夫である自らの首をあっさりと地獄へ売り飛ばした張本人の名前を、そんなにも愛おしそうに、無防備に呼ぶなんて。
僕はゆっくりと首を傾げ、窓際の逆光から這い出るように顔を晒した。
そして、この日のために用意してきた、極上の笑みをその唇に浮かべて声を掛けた。
「おはよう、ジュリアス。――本当に、気持ちの良い朝だね」
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