目覚めの狂詩曲
僕と闇医者ドクター・ピオ、そして拘束役の私兵が二人。
大の男四人が重厚な寝室の扉を開け、何一つ遠慮することなくその足音を響かせて踏み込んだ。
しかし、ベッドの上に横たわるジュリアスは、迫り来る見えない恐怖を紛らわせるために煽ったのだろう、アルコール度数の高い強い酒に溺れ、泥酔してピクリとも動く気配がなかった。
暗殺者から隠れるように、何重にも布団を被るその無様な姿は、かつての傲慢な嫡男の面影など微塵もない。
ふと視線をやると、ベッド脇のサイドテーブルの上には、夜気に当てられて冷え切ったガラスの水差しが置かれていた。
『カース、この水を顔面にぶっかけて、叩き起こしてやりましょうか?自分がどんな状況に置かれてるか、一瞬で理解させてパニックになる顔が見たいわ』
脳内で『私』が、嗜虐的な愉悦を孕んだ冷たい声を響かせる。
((……いや、待てよ『ミーナ』。もっと面白いことを思いついた))
僕は薄暗い部屋の中で、静かに首を振った。
((どうせあいつは、これから始まる終わりのない永劫の地獄の中で、死にたくとも死ねずに、二度とまともに眠ることなどできなくなるんだ。なら、人生最後の睡眠くらい、たっぷりと貪らせてやればいいさ))
無理に起こす必要などない。
たっぷりと良い夢を見させて、自然に心地よく目覚めたその瞬間――目の前に、去勢され、かつて自分が見下していたはずの『化け物』が枕元に佇んで微笑んでいる。
その瞬間に味わう絶望の方が、よっぽど極上で、美しく、僕の乾いた心を潤してくれるはずだ。
「お前たちは気配を消して、部屋の影に潜んでいろ。ドクターもだ」
「クク……御意に。最高の目覚ましサプライズになりますな、カース様」
ドクター・ピオがねっとりと笑い、私兵たちと共に音もなく部屋の暗がりに同化していく。
私兵たちが完全に影に溶け込むと、僕自身はゆったりと部屋を周り、月光が差し込む窓際へと腰掛けた。
ベルベットの重いカーテンを指先で少しだけ開け、夜空に浮かぶ皮肉なほど美しい満月を眺めながら、愛しい弟が目を覚ますその時を、静かに、優しく時間を潰しながら待つことにした。
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