奈落の開門
かつてジュリアスが、僕とお母様からすべてを奪い、傲慢に君臨していたこのトラッド辺境伯邸。
あいつにとってここは、自分を脅かす者など誰もいない安全な『自分の城』であり、愛する妻とこれから生まれる子供に囲まれた『幸福の象徴』そのものだったはずだ。
自分は世界の中心で、すべてを支配しているのだと、あいつは疑いもなく信じていた。
だが、その城の強固な防壁を内側から無残に切り崩したのは、他ならぬあいつ自身が命がけで残そうとした『家族』だった。
「さあ、行こうか」
僕が静かに告げると、背後でドクター・ピオが不気味に医療器具をカチャリと鳴らし、屈強な私兵たちがジュリアスの寝室の重厚な扉に手をかける。
安全だと信じ切っていた自分の城で。
最も愛し、トラッドの未来を託した家族に裏切られ。
泥酔から目覚めた瞬間、かつて『去勢された化け物』と見下し、嘲笑った不完全な兄の手に落ちている――。
ジュリアス。
お前は一体、どんな顔をしてその目を覚ますだろうか。
お前が現実を理解し、絶望に顔を歪ませ、惨めに命乞いの悲鳴をあげるその瞬間が――。
僕は今から、狂おしいほどに楽しみで、楽しみで仕方がなかった。
「開けろ」
僕の冷徹な命令と共に、ついに地獄の扉が音もなく押し開かれる。
暗闇の中に眠る哀れな獲物へ向けて、僕は最悪の復讐劇の幕を、容赦なく引き下ろすのだった。
少しでも面白い、続きが気になると思ってくださったら、ブックマークや評価(☆☆☆☆☆)で応援していただけると大変励みになります!
基本毎日更新です。
今後もよろしくお願いします!




