それぞれのリアクション
一瞬、室内の時間がピキリと凍りついた。
差し出された『特待生合格通知書』に目を落とした三人の顔が、三者三様に、劇的に変化していく。
「――カースッ!!お前というやつは、一体何を考えているんだァ!!」
最初に沈黙を破ったのは、父上の地を這うような怒号だった。バンッ!とデスクを激しく叩き、鬼の形相で僕を睨みつける。
「実技免除という最高に安全な推薦枠を与えてやったというのに、それを無視して一般試験に殴り込みをかけるとは何事だ!我が辺境伯家の顔に泥を塗る気か!?万が一、万が一にも不合格になっていたら、トラッドの名は地に落ちていたのだぞ!」
「ひえっ、申し訳ありません……!」
あまりの剣幕に、僕は思わず首をすくめて縮み上がった。
((え、あれ?怒られるのそっち!?学費タダで受かったんだから、超親孝行だって褒められると思ったのに……!貴族の面子を余計な危険に晒したってことで大激怒されてる……!))
((いや、でも待てよ?『万が一』ってことは、父上の中で僕が不合格になる可能性は限りなく低いって信じてくれてたのかな?……ふふ、父上ってばいつも素っ気ないけど、実は僕のこと意外と信頼してくれてるじゃないの))
暢気にそんなことを考える僕の隣で、今度は母上がハンカチを両手で握りしめ、ボロボロと大粒の涙を流し始めた。
「ああ、カース……!なんということでしょう……!あなた、またそんな無茶をして……。もしまたお身体に障ったらと思うと、お母様は生きた心地がしませんでしたわ……!ああでも、特待生だなんて……!ああ、我が子がそんなに素晴らしい才能を秘めていたなんて……。ううっ、おめでとう、本当によかったわ……!」
怒り狂う父上の横で、心配と感動がごちゃ混ぜになって過呼吸気味に号泣する母上。
そして、部屋の隅。
じっと僕を見ていた弟のジュリアスは――。
言葉を失ったまま、血がにじむほど拳を固く握りしめ、般若のような形相で僕を激しく睨みつけていた——。
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