裏切りの序章
ジュリアスを地獄の底へ突き落とすための舞台は、いまや完璧に整いつつあった。
だが、僕は決して焦らない。
焦って一瞬で終わらせてしまっては意味がないのだ。
あいつの首をただ綺麗に撥ねるだけでは、母上が流した血の代償としては、あまりにも軽すぎる。
僕は、復讐の終曲を飾る最後の仕上げとして、教皇庁から毟り取った莫大な裏資金を惜しみなく投じ、裏社会で「当代最高」と謳われる異端の闇医者、ドクター・ピオを秘密裏に雇い入れた。
「お呼びでございますか、カース様。私にかかれば、どんなに無残に損壊した肉体であっても、魂が肉体を離れるその寸前で無理矢理に繋ぎ止めてみせましょう。……死にたくとも死ねぬ永遠の地獄を、長きにわたって提供することをお約束しますよ、ククク……」
白濁した不気味な瞳を怪しく光らせ、不敵に笑うドクター・ピオ。
その狂気的な言葉に、僕は心底満足げに頷いた。
((そうだ、すぐには死なせない……。絶対に、一瞬で楽になどしてやらない))
あいつの四肢を挽き肉のような血塗れの細片に変えようと、生きたまま皮膚を剥ぎ取ろうと、この医者にその都度、何度でも治療させ、肉体を再生させる。
できる限り長く、何週間も、何ヶ月も、何年でも――僕の気が済むまで、この手でなぶり殺しの拷問をループさせてやるのだ。
完璧な復讐の夜へと向けて、僕はジュリアスが怯えながら立てこもるトラッド辺境伯邸の敷地内へ、教皇から買い叩いた有能な斥候を潜入させ、最奥の寝所へと至る確実な侵入経路を探らせていた。
だが、数日後。
その斥候が僕の元へと持ち帰った報告は、僕の予想を遥かに超える、これ以上ない『極上のカード』だった——。
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