闇の中の微笑
「命だけは助けてくれ、だって?ふっ……ふふ、あはははは!いいね、最高だよジュリアス……!」
僕は手紙を暖炉の業火の中へと放り込んだ。
上質な紙が、ジュリアスの命乞いごと赤黒い炎に包まれ、一瞬で灰へと変わっていく。
「誰が簡単に殺すと言った?幽閉なんて更に生ぬるい真似、僕がするわけがないだろう。……君には、もっとお似合いの地獄を用意してあるんだから」
僕は狂おしいほどの愉悦に肩を震わせ、暗い部屋の中で一人、低く、ねっとりとした笑い声を漏らした。
喉の奥からせり上がる笑いが止まらない。
((いい気味だ。あの傲慢だったジュリアスが、夜も眠れず、僕の影に怯えて藻掻き苦しんでいる。これだよ、僕がずっと見たかったのは。この無様な喜劇なんだ……!))
『カース……。あなた、本当にいい性格になったわね……』
脳内の『私』が、冷や汗を流すような気配と共に、呆れたような声を響かせた。
『ジュリアスをただ力でひねり潰すんじゃなく、まずは精神的に極限まで追い詰めて、絶望のどん底に叩き落としてから仕留める。……あなたの計画通り、あいつの精神も防衛網もすでにボロボロよ。もう、いつでも首を獲りに行けるわ』
これ以上闇に堕ちるな――彼女の言葉の裏には、そんな遠回しな警告と哀れみが含まれている。
けれど、僕はジュリアスを楽に、一瞬で死なせてやるつもりなど毛頭なかった。
そんな慈悲、僕のどこを探しても残ってはいない。
((まだだよ、『ミーナ』。まだ足りない。簡単に死なせてやるものか。あいつには、僕と母上が味わった絶望と地獄のすべてを、その骨の髄まで、じっくりと叩き込んでからじゃなきゃ終わらせない……))
ふと視線をやると、鏡に映る僕の顔が目に入った。
燃え盛る暖炉の赤に不吉に照らされたその容姿は、まるで古いお伽噺に出てくる、人間の血を好む冷酷で美しい吸血鬼のようだった。
かつての清廉な面影は、もうどこにもない。
最愛の妻と親友を鳥籠に閉じ込め、教皇の醜悪な愛欲にその身を委ねて手に入れた、血塗られた絶対的な力。
裏切り者の弟が暗闇で恐怖に震え、涙を流して命乞いをする無様な姿を思い浮かべながら、僕は復讐の終曲を飾る『最後の舞台』へ向けて、静かに、冷徹に指揮棒を振り上げるのだった。
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