音なき狂詩曲
教皇ユリウス6世が僕の強請りに応じて貸し出した、信仰を持たない教会の刺客たち。
彼らの手並みは、まさに『神速』であり、かつ『完璧』そのものだった。
王国北部の親帝国派領主たちは、僕が裏から手渡した名簿の通りに、確実に、一人、また一人とこの世から消し去られていった。
ある者は真夜中のベッドの上で不自然な心不全を装われ、ある者は厳重に警備された密室の奥で謎の不審死を遂げる。
暗殺の現場には、実行犯である教会はもちろん、その黒幕である僕へと繋がる証拠や痕跡など、髪の毛一本すら残されなかった。
歴史の闇を幾世紀も生き抜いてきた聖座の猟犬たちは、あまりにも鮮やかにその牙を振るう。
そして、この完璧な暗殺劇の幕が上がるたびに、主を失った領地と兵力、さらには遺された莫大な財産は、裏で周到に手を回していた僕の『私兵』たちの懐へと、音もなく、貪欲に吸収されていった。
抗い難い暴力と恐怖によって空白となった北部の支配権は、すべて僕の掌の上で塗り替えられていく。
かつてトラッド辺境伯領の屈強な精鋭を従え、母上を奪い、僕を去勢された化け物と蔑んで傲慢にふんぞり返っていたジュリアス。
彼は今、自らの手足となるはずだった王国北部の同盟領主たちが、目に見えない不可視の刃によって次々と切り落とされていく恐怖に、完全に正気を失いつつあった。
逃げ場のない蜘蛛の巣に捕らえられた羽虫のように、彼は暗闇の中でただ一人、姿なき死神の足音に怯え続けている。
少しでも面白い、続きが気になると思ってくださったら、ブックマークや評価(☆☆☆☆☆)で応援していただけると大変励みになります!
基本毎日更新です。
今後もよろしくお願いします!




