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【本編20万字完結】カストラート 〜傾国の歌劇(オペラ)〜【幕間更新あり】  作者: nhhtn
復讐編

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歪んだ支配


僕が教皇庁の『終身専属歌手』に就任し、一般のチャリティコンサートや劇場のステージへ一切姿を現さなくなったというニュースは、瞬く間に大陸全土を駆け巡り、世界中に激震をもたらした。


「まさか……!あの『権天使』の至高のソプラノが、二度と聴けないというのか……!?」

「教皇猊下が、あの奇跡の歌声を己の欲のために独占し、カース様を強引に囲い込んだのだ!!」


世界中の劇場主や熱狂的なパトロン、そして僕を神格化していた民衆たちは一斉に悲嘆に暮れた。

しかし、その悲しみは瞬く間に、ドロドロとした怒りへと形を変えていく。

矛先は、僕を暗い私室に閉じ込めたユリウス6世、そして何より――教皇の権力に目が眩み、甘美な果実を貪るようにその身を差し出したとされる、僕自身への激しい非難へと変わっていった。


『権力に魂を売った、欲深き堕天使』

『神聖なる歌声を売春の道具に成り下げた化け物』


街の路地裏に卑劣な風刺画が出回り、どれほど汚い言葉で叩かれようとも、僕の心は1ミヌートたりとも痛むことはなかった。

むしろ、そんな大衆の浅はかな怒りが滑稽でさえあった。

なぜなら、その世間から隔絶された薄暗い密室のベッドの上で、僕は教皇の狂おしいほどの執着を、すでに完全に掌握していたのだから。


「あぁ、猊下……。もっと……もっとください……。もっと僕に力を……」


愛欲に溺れ、獣のような息を吐きながら僕を抱きしめる男の胸に顔を埋め、僕は壊れそうな声を意識的に演じてみせる。


「僕の故郷を、そして母上を奪ったあの裏切り者どもを……地の果てまで追い詰めて、誰にも悟られず根絶やしにするための、見えざる怜悧な刃を僕に……」

「あ、ああっ、カース……!私の愛しい天使よ、すべてお前の望むままだ!」


僕が甘えるように耳元で囁き、彼の髪に細い指を絡めるだけで、最高権力者であるはずのユリウス6世は理性を失ったように激しく頷いた。

潤沢な裏資金でも、国際法を無視した武力でも、闇に潜む一殺多生の暗殺者の手配でも。

僕が憂いを湛えた視線を送り、震える指で弱々しく縋りつき、脳を蕩かす天上のソプラノで強請ってみせれば——この不完全な身体と引き換えに、ユリウス6世は教会の持てるすべての『闇』を、僕の掌へと喜んで差し出してくれた。

世間が僕を『籠の鳥』と憐れみ、『堕ちた偶像』と罵るすぐ裏側で、僕は教皇という名の巨大な操り人形の糸を、その指先で冷酷に、そして確実に引き絞っていたのだった——。


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