入学確約、ゲットだぜ!
「♪~~~~~~……」
最後のロングトーンがホールの深い残響に溶けていく。
水を打ったような数秒の静寂の後――割れんばかりの拍手と、地鳴りのような歓声が巻き起こった。
審査員長を含む何人かに至っては、興奮のあまり立ち上がり、口々に絶叫している。
「「ブラァボーーゥ!!」」
「「ブラヴィッシモォォ!!」」
「素晴らしい……!いや、素晴らしいなんて言葉では足りない!カース君、君の推薦入学は、今この瞬間を以て『特待生』としての入学へ変更とする!学費は全額免除、寄宿舎も最上級の個室を用意しよう!」
感動のあまり涙ぐみながら、僕に特待生入学を確約する審査員長。
何を隠そう、彼こそがこのサントマリオ・ピエタ・カプアナ音楽院の『学長』その人であった。
他の審査員や、廊下で覗き見していた受験生たちに向けて高らかに放たれたこの宣言は、つまり、今後僕が学長の強力な庇護下に置かれることを意味していた。
この音楽院は完全なる実力主義の聖域。
いくら実家の辺境伯家に権力があろうと通用しない世界だが、これほど絶対的な後ろ盾ができれば、凡才どもからの嫉妬や嫌がらせを心配する必要もない。
思う存分、学業に邁進できるというものだ。
「ありがとうございます、先生方。身に余る光栄です」
僕は完璧な貴族の礼を取りながら、脳内で『私』とバチンと熱いハイタッチを交わした。
『やったわね、カース!特待生枠、ゲットだぜ!』
((うん!これで僕の音楽家としての第一歩は大成功だ!))
こうして、実力で全員のぐうの音も出させないまま、僕の輝かしい(?)音楽院生活が確定した。
――ちなみにこの時、遥か遠くの辺境伯邸では、僕の本当の実力を知らないジュリアスが、「これで兄上は実技試験で恥を晒し、修道院送り確定だな」と自室でほくそ笑んでいた。
しかしその数日後、王都からの早馬で「カース様、実技試験にてシャンデリアを破壊、特待生として首席入学が決定」という報せを受け取り、泡を吹いて卒倒することになるのだが、それはまた別の話。
……そして、推薦枠を無視して暴走した僕が、入学手続きのために一度実家へ意気揚々と凱旋した際、父上に「心臓に悪い!二度と勝手なことをするな!」としこたま絞られたのも、また別の話である。
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