娼年
((『ミーナ』。僕の手駒となる軍隊を買い叩き、維持するほどの富を、最も手っ取り早く築く方法を教えてくれ。今の僕の立場と、この声を最大限に利用できる方法を、君の知識から導き出すんだ))
薄暗い寝室のベッドに横たわったまま、僕は虚ろな狂人の仮面を被り、脳内で冷酷な問いを放った。
僕の張り詰めた、一切の容赦のない声音に、脳内の『私』は一瞬だけためらうような気配を見せた。
だがすでに引き返せない共犯者となった彼女は、覚悟を決めたように、前世で培った歴史と芸能の知識を絞り出すように語り始めた。
『……一番手っ取り早いのは、歴史的なカストラートたちが実際にやってきたことと同じよ。「強力なパトロンを得ること」ね。それも、ただの支援者じゃないわ』
脳内の彼女の声が、微かに苦渋に震える。
『……正直、これを今のあなたにオススメはしたくないわ……。したくないけれど――莫大な富を持つ王侯貴族や、あるいは宗教の頂点たる教皇のような権力者の「愛人」に収まるような色仕掛けが、最も効率的かつ効果的よ。彼らの歪んだ寵愛を勝ち取り、その権力と財布を直接握るの。歴史上、カストラートは宮廷の最高級の性の玩具としても重宝された闇の側面があるから……』
((愛人、か……。素晴らしい提案だよ『ミーナ』。僕のこの『不完全な身体』すら大義のために利用できるなら、安いものさ……))
かつて父上やジュリアスに『去勢された化け物』『出来損ない』と罵られ、尊厳を踏みにじられた、男でも女でもないこの歪んだ身体。
それを今度は自ら進んで極上の武器に仕立て上げ、傲慢な権力者たちを文字通り骨抜きにして、裏から籠絡してやる。
ぞっとするような悍ましい手段だったが、復讐の毒に侵された僕の心は、もはや微塵も揺らがなかった。
「ふふ、あははは……」
アイシャやミハイルが席を外し、静寂に包まれる部屋の中、僕は壊れた狂人のふりを続けながら、天井に向けて小さく、けれど酷く冷酷な笑みを漏らした。
美しい権天使の皮を被った怪物の計画は、より深く、より淫らな世界の闇へと、その根を伸ばそうとしていた——。
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