渇望
ジュリアスが血塗られた隠し通路から逃げ延びた先には、未だ強固な、そして忌々しいしがらみが残っていた。
ローデンブルク帝国との軍事的な協力関係こそ、僕たち『ABC同盟』の圧倒的な圧力によって切れたものの、ジュリアスはあの狂った父上が残したトラッド辺境伯領の屈強な私兵たちを、そのまま丸ごと従えているのだ。
地の利もあり、実戦経験も豊富な彼らを突破するのは容易ではない。
武力によってジュリアスを圧倒し、なおかつ僕の歪んだ願望通りに「五体満足で生け捕り」にするためには、兎にも角にも強力な『戦力』が必要だった。
それも、ブリタニアやアルゴス、カイロネイアといった、国際政治や『平和』を盾に僕の復讐を邪魔する各国同盟軍であってはならないのだ。
彼らは少しでも僕が凄惨な引き金を引こうとすれば、即座に正論を吐いて僕の手を掴み、二度と離さないだろう。
((僕に必要なのは……僕の命令一つで、どんな凄惨な虐殺や拷問へも躊躇なく手を染める、僕個人だけに絶対的な忠誠を誓う『私兵』だ))
ベッドに横たわり、天井を見つめたまま、僕は心の中でそう毒を吐いた。
((そのためには、同盟の枠組みから独立した、莫大な『富』と『権力』を僕個人の手の中に握らなくてはならない。誰にも文句を言わせないだけの財力が、すべての基礎になる))
僕は脳内の冷徹な思考の海へと深く潜り、不本意ながらも共犯者となってくれた『私』の記憶の扉を叩いた。
その知識を、貪欲に、容赦なく求めにかかる。
((教えてくれ、『ミーナ』。君の世界にあった、国家の介入を許さない【最強の経済圏】の作り方を。莫大な富を瞬時に生み出し、人を、軍隊を、裏から意のままに動かすための仕組みを——!))
僕の冷酷な問いかけに、脳内の彼女は小さく震えながらも、その膨大な知識の引き出しを開け始めた。
それが、悪魔に魂を売った共犯者の、最初の一歩だった。
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