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【本編20万字完結】カストラート 〜傾国の歌劇(オペラ)〜【幕間更新あり】  作者: nhhtn
復讐編

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脳内会議:共犯契約


『カース……あなた、狂ったふりをしてるだけね……!?頭の中で、ジュリアスへの信じられないような拷問の計画を立ててる……!』


脳内で『私』の悲鳴のような告発が響き渡った。

僕の脳裏に描かれていた、肉体を切り刻み、骨を砕き、命の灯火をギリギリまで弄ぶような残虐極まるパズルの完成予想図を、彼女ははっきりと見てしまったのだ。


『やめて、お願いだから正気に戻って!そんなことをしたら、あなたは本当に、あの最悪な父親やジュリアス以下の「悍ましい怪物」になってしまうわ!!今すぐミハイルやアイシャに本当のことを相談して、復讐なんて――』


涙ながらに、ヒステリックに叫び続ける『私』の声。

それを冷ややかに聞き流しながら、僕はうつろな瞳のまま、心の中でひどく冷たく、残酷に微笑んだ。


((無駄だよ、『ミーナ』。どれだけ叫んだって、この身体を動かす主導権は僕にある。君には僕を止める力なんてない。僕の手や口を勝手に動かして、周囲に「復讐を企んでいます」なんて暴露して、僕を止めさせることもできないんだよ))

『――っ!』


絶望に息を呑む気配が伝わる。

僕は追い打ちをかけるように、冷徹な論理を彼女の魂へと突き立てた。


((それにさ……よく考えてみなよ。もし僕が君のアドバイス通りに復讐を諦めたとして、僕のこの心が救われると思う?もし僕がこのまま目標もなく無為に生きて、何も成さず野垂れ死んだら——君の悲願である「劇場のトップスターになる」っていう前世からの夢も、ここで永遠に潰えることになるんだよ?))

『な……に、言ってるの……。そんな、私の夢を人質にするみたいな言い方――』


『私』には珍しい絶句。

いつも脳内を賑やかし、前世の知識と奇抜な戦術で僕を導いてくれた彼女が、二の句を継げずに押し黙っている。


((僕と組むんだ、『ミーナ』。君の持っている現代日本の知識、戦術、そしてあの音楽院の頂点を掴み取った『僕たちのソプラノ』の技術。その全てを、僕がジュリアスへの完璧な復讐を遂げるために貸してくれ))

『カース……。あなた、本当に……』


脳内に、『私』の深く絶望的な沈黙が流れる。

現代日本という平和な世界で生きてきた『私』にとって、僕がこれから始めようとしている血塗られた復讐劇は、到底受け入れられるものではなかった。

けれど、暴走する僕を止める術はなく、もしここで僕が破滅すれば、彼女の存在意義もろとも奈落へ落ちるという過酷な現実が横たわっている。

長い、酷く長い、暗鳴の沈黙の後——。

『私』は、すすり泣くような声を漏らしながら、不本意かつ消極的、けれど確実な『同意』の意志を僕に示した。


『……分かったわよ。止められないなら、せめて、あなたがジュリアスに返り討ちに遭って死なないように……最後まで、付き合ってあげるわよ。だから、絶対に死なないでよ、カース……』

((ありがとう……。頼りにしているよ、『ミーナ』))


これで、最後のピースは揃った。

最愛の母を理不尽に奪われ、世界の救世主たる『天使』であることを完全に辞めた少年。

彼は脳内に最強の『共犯者』を従え、虚ろな狂人の仮面の裏で、実の弟を地獄の底へと引きずり落とすための『復讐の第二楽章』へと、静かに、そして確実に着手するのだった。


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基本毎日更新です。

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