純黒の炎
((ジュリアス……ジュリアス・ディ・トラッド……!!))
虚ろな瞳の奥底で、僕はどこまでも黒く、そして悍ましい復讐の炎を絶やすことなく燃やし続けていた。
食事を頑なに拒み、時折壊れたように賛美歌の一節を歌っては狂人を装っているのは、すべて周囲の警戒を解くための欺瞞であり、狡猾な計算に過ぎない。
僕の本当の目的――それは、大陸すらも動かす『ABC同盟』というあまりにも巨大すぎる組織に邪魔されることなく、ただ一人で、あの狂った実の弟を地の果てまで追い詰めることだった。
「カース様、お願いです、私を見て……」
「カース、君がそんなんじゃ、お母様だって浮かばれないだろう……!」
アイシャが涙ながらに僕の手を握りしめ、ミハイルが悔しげに声を荒げる。
けれど、その温かい言葉のすべてが、今の僕の耳にはただの雑音として通り過ぎていく。
((生温い『処刑』なんて絶対に許さない。あいつを五体満足のまま生け捕りにし、誰の目も届かない暗い地下室へと閉じ込め――この手で、何日も、何週間もかけて、この世のあらゆる凄惨な拷問の全てを味わわせてから、じわじわと嬲り殺しにしてやる……!))
そのためには、僕を『神の御子』や『権天使』として祭り上げ、「平和的な戦後処理」を望んでいるカイロネイアの神官たちやスカロ、そして何より、優しすぎるアイシャやミハイルが、大きな障害物になる。
彼らは僕を引き止め、全力で復讐の邪魔をするに違いないのだ。
周囲の必死な心配を完全に無視し、僕は如何にして彼らに悟られず、誰の邪魔も入れずに復讐を完遂するか――その血塗られた完全犯罪のパズルを、脳内で冷酷に組み立てていた。
——だが。
『……ッ、嘘……。カース、あなた、まさか……!』
閉ざされた昏い思考の海の中で、唐突に、その悲鳴が響き渡った。
他の誰にも気づかれるはずのなかった僕の脳内の凶行に、他ならぬ、前世の記憶を共有するもう一人の『私』が、ついに気づいてしまったのだった。
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