脳内会議:祝福
「Fooooooooo!!満腹!ごちそうさま!!』
脳内で『私』が、まるで上質な恋愛小説を読み終えた読者のように、テンションMAXで大はしゃぎの声をあげた。
『身体的問題で子供が作れないなら、生涯の伴侶として魂を結びつければいい。……って、ちょっとカース!カイロネイアの象徴である神殿の、聖なる巫女の『乙女心』をピンポイントで射止めて、軍の暴走を抑えようなんて、おぬしも相当悪よのぉ(笑)」
((ち、違うよ!?政治的な下心なんて一切ない、これっぽっちもないってば!僕はただ、本気であの子を幸せにしたいと思ったんだ!!))
心臓がバクバクと音を立てる。
改めて言葉にすると、大胆なことをしてしまったと、今更ながら顔が真っ赤になるのが自分でも分かった。
そんな僕の必死の弁明を聞いて、脳内の彼女はふっと声音を和らげ、どこか姉のように慈愛に満ちた笑みを浮かべた。
『あはは、分かってるわよ。……よく言ったわ。本当に、最っ高にカッコよかったわよ。……からかいはしたけれど、ちゃんとあの子を一生幸せにしてあげなさいよ、カース。それが、あなたが背負った男の責任なんだからね』
脳内で茶化しながらも、誰よりも僕たちの幸福を祝福してくれる『私』の優しく温かい声。
僕は胸の奥が、じんわりと、心地よく解きほぐされていくのを感じていた。
そして、翌朝。
僕の妻となったアイシャは、昨夜までの暗い世仇を綺麗に削ぎ落とした、実に清々しい表情をしていた。
彼女は自らの足で、凛とした面持ちでカイロネイア軍の将兵たちの前に立つと、毅然とした声で広場に言い放ったのだ。
「イジェプタの御子たるカース様は、血で血を洗う不毛な復讐ではなく、さらに高潔なる真の勝利の道を指し示されました……。これ以上の無益な殺生は神の御心に背く行為です。神の意思に従い、無駄な虐殺はここまでにせよ!!」
「「「――っ!!」」」
ざわり、と将兵たちの間に衝撃が走る。
『聖なる巫女』による直々の言葉と、彼らが抱く僕への変わらぬ狂信。
二つのピースがこれ以上ないほど美しく噛み合ったことで、あれほど頑なだったカイロネイアの『帝国殲滅論』は、まるで奇跡的のように綺麗に収まったのだった。
最愛の伴侶という、世界で一番確かな光をその腕に得て。
本当の意味で、血塗られた破滅の独裁者の道を土壇場で回避した権天使。
少年は今、銃や大砲の冷たい轟音ではなく、胸に優しく流れる平和の祝歌を抱いて、帝国との『最終対話』の場へと、確かな一歩を踏み出す——。
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