肩の荷
((帝国民が……僕たちと同じ、被害者……?))
最初は、どうしても釈然としなかった。
あれほど僕たちを執拗に苦しめ、故郷を蹂躙した帝国の人間を、自分と同じ傷を負った被害者だなんて、素直に受け入れられるはずがなかったのだ。
「そんな、そんな綺麗な話があるもんか……。あいつらは、喜々として僕たちの国を侵略したんだぞ……」
絞り出すような僕の言葉に、スカロはふっと鼻で笑い、机の上で組んだ手に顎を乗せた。
「じゃあ聞くが、お前は実家のトラッド家がやらかした悪事の片棒を、喜んで担いでた口か?違うだろ。上の奴らが狂ってりゃ、下の人間は従うか死ぬかの二択しかねぇんだよ。今のお前が同盟の兵士たちを白痴みてぇに狂わせてるのと同じようにな」
「それは……!」
言葉に詰まる僕を、スカロの鋭く光る金色の眼が見つめ続ける。
スカロの言葉を何度も頭の中で反芻するうちに、僕の胸を支配していた、あのどす黒く重苦しい『万能感』と『復讐心』が、少しずつ形を変えて剥がれ落ちていくのを感じた。
もしかしたら、もうこれ以上、血を流して戦わなくていいのかもしれない。
これ以上の犠牲を出さずとも、対話で、そして僕の『歌』の力で、この狂った世界の連鎖を解決できるかもしれない。
「……気付くのが、少し遅すぎたかもしれないな。僕は、あいつらと同じ怪物になるところだった」
ぽつりと溢した僕の言葉に、スカロはいつもの不敵な笑みを少しだけ戻し、僕の肩をバシリと力強く叩いた。
「気付けたなら上等だろうが。お前はまだ、泥にまみれて俺様の船に飛び込んできた——あの時の小汚くてクソ生意気な、ただのガキのままだよ。……それでいい」
「……そう、だね。スカロ、ありがとう……」
そう呟いた瞬間、『ABC同盟』締結からずっと僕の細い肩にずっしりと圧し掛かっていた、世界を背負うという狂気的な『重圧』が、すっと軽くなった気がした。
僕の忘れていた、純粋に平和を願い、ただ歌を愛していた音楽生としての心が、親愛なる海賊の手によって、静かに取り戻されようとしていた。
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