神の書いた楽譜
まだ、誰も気づいてはいなかった。
すべてが思惑通りに進む、この都合の良すぎる完璧な展開の裏にある歪みに。
一人の少年が手に入れてしまった、その身の丈にはあまりにも合わない、世界を揺るがすほど強大で過剰な権力の危うさに。
そして、その絶対的な権力という名の甘やかな毒に蝕まれ、彼の清らかだった心が、自覚もないまま少しずつ昏い闇に染まっていく、その決定的なプロセスにさえも、誰一人として危機感を抱く者はいなかった。
それこそが、この世界を冷酷に縛り付ける『運命』が仕掛けた、何よりもあくどく、狡猾な罠だということも。
それはまるで、姿なき巨大な指揮者が暗闇の中でタクトを振るい、少年を最も美しい『破滅のフィナーレ』へと誘うために、寸分の狂いもない完璧な楽譜を演奏させているかのように。
誰もが己の意志で道を選び、進んでいると信じ込まされながら、その実、あらかじめ決められた破滅へのステップを正確に踏まされているに過ぎない。
世界の主導権を完全に握ったと確信し、全能感の絶頂に酔いしれる僕たちの足元で。
誰も気づかぬうちに、血塗られた真の運命の歯車が、ゴトリ、と不気味な音を立てて静かに逆回転を始めていた。
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