揺らぐ天秤
新王の擁立。
その衝撃的なニュースは、大陸を包囲する『ABC同盟』の兵士たちに留まらず、これまで帝国の重圧に喘ぎ、絶望していた無数の民衆をも狂喜乱舞させた。
「正統なる王の血脈は、まだ途絶えていなかったのだ!」
「教皇猊下が直接祝福を与えられた! 我らが新王、万歳!!」
王都の広場は、連日連夜お祭りのような熱狂に包まれていた。
まだ言葉すら発せない、玉座にちょこんと座るだけの幼い赤ん坊。
だが、そのすぐ後ろに冷然と立ち、事実上の摂政のごとき圧倒的な威光を放っているのは――僕だった。
『権天使筆頭』にして、神聖なる『イジェプタの御子』。
そして今や、新たなる王の絶対的な後ろ盾となった男、カース・ディ・トラッド。
いまや僕の一言で、三大国の巨大な軍隊が動き、教会の最高権威すらもがひっくり返る。
かつて実家に裏切られ、冷たい地下牢で泥水を啜って飢えを凌いだ無力な少年は、文字通りこの世界の頂点へと登り詰めようとしていた。
——だが。
割れんばかりの熱狂に沸く王宮のバルコニーで、眼下に広がる民衆の歓声を見下ろす僕の脳内に。
いつになく強張り、冷や汗をにじませた『私』の声が、鋭く響き渡った。
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