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【本編20万字完結】カストラート 〜傾国の歌劇(オペラ)〜【幕間更新あり】  作者: nhhtn
動乱編

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揺らぐ天秤


新王の擁立。

その衝撃的なニュースは、大陸を包囲する『ABC同盟』の兵士たちに留まらず、これまで帝国の重圧に喘ぎ、絶望していた無数の民衆をも狂喜乱舞させた。


「正統なる王の血脈は、まだ途絶えていなかったのだ!」

「教皇猊下が直接祝福を与えられた! 我らが新王、万歳!!」


王都の広場は、連日連夜お祭りのような熱狂に包まれていた。

まだ言葉すら発せない、玉座にちょこんと座るだけの幼い赤ん坊。

だが、そのすぐ後ろに冷然と立ち、事実上の摂政のごとき圧倒的な威光を放っているのは――僕だった。

権天使プリンシパリティーズ筆頭』にして、神聖なる『イジェプタの御子』。

そして今や、新たなる王の絶対的な後ろ盾となった男、カース・ディ・トラッド。

いまや僕の一言で、三大国の巨大な軍隊が動き、教会の最高権威すらもがひっくり返る。

かつて実家に裏切られ、冷たい地下牢で泥水を啜って飢えを凌いだ無力な少年は、文字通りこの世界の頂点へと登り詰めようとしていた。

——だが。

割れんばかりの熱狂に沸く王宮のバルコニーで、眼下に広がる民衆の歓声を見下ろす僕の脳内に。

いつになく強張り、冷や汗をにじませた『私』の声が、鋭く響き渡った。


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