逆転の前奏曲
教皇猊下と国王夫妻、そして生まれたばかりの幼き王子を宮殿の最も安全な一室へと移すと、僕は息をつく間もなく、アルゴス=カスティエラとカイロネイアの両使節団を緊急招集した。
「……国王夫妻は、あまりに衰弱が激しい。彼らが再び表舞台に立ち、その権威を完全に回復させるには、どうしても時間がかかりすぎます。ですが、僕たちには『小さな希望』がいる——」
僕は先ほど見た、王妃殿下の腕に抱かれ眠る王子の愛らしい横顔を思い出しながら、集まった一同を見据えて力強く宣言した。
「帝国によって踏みにじられたイリアータ王国の、完全なる復活を世界に喧伝する。……そのために、僕は今ここで、人質であった国王夫妻に代わり、この幼き第二王子を『新たな国王』として擁立します!」
「「「新王、擁立……!!」」」
一瞬の静寂の後、使節団の面々から驚愕のどよめきが上がった。
そんな大人たちを制するような眼差しで、僕は言葉を続ける。
「ええ。幸いにも、ここには最高権威である教皇猊下もいらっしゃる。猊下の手による王子への戴冠式を、今すぐ、この王都で執り行うのです!帝国に囚われていた『正統なる血統』が、教会の『聖なる祝福』を受け、新たなる希望の王として即位する。この歴史的瞬間の熱狂こそが、帝国を焼き尽くす、我ら同盟軍のこれ以上ない『最強の心の拠り所』になるはずです!」
囚われていた大国の権威を救い出し、今度はそれを、幼き新王擁立というこれ以上ない強力な政治の武器へと昇華させる。
帝国によって都合よく書き換えられた歴史を、今度は僕が、僕だけの『神聖な音楽』で再び鮮やかに書き換える。
売国奴の弟ジュリアスと、傲慢な皇子レオン。
彼らこそが正統なる王を脅かす真の『逆賊』であると世界に知らしめるために、僕は次の一手を指すのだった。
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