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【本編20万字完結】カストラート 〜傾国の歌劇(オペラ)〜【幕間更新あり】  作者: nhhtn
動乱編

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小さな希望


地下の奥深く、陽の光すら届かない重厚な鉄格子の向こうに、彼らは囚われていた。


「教皇猊下!国王両陛下!」


僕が格子に駆け寄り声をかけると、薄暗い牢内で蹲っていた老人たちが、怯えたように力なく顔を上げた。

そこには、やつれ果て、かつて世界を平伏させていた神聖な威厳など微塵もない、変わり果てた姿の教皇猊下。

そして、冷たい床の上で衰弱しきって横たわる国王夫妻がいた。

彼らは帝国の執拗な尋問と劣悪な環境により、精神的にも肉体的にも、とうに限界を迎えていたのだ。

だが、駆け寄った僕の目は、横たわる王妃の腕の中に釘付けになった。

この陰惨な空間に不釣り合いな、眩いばかりの『奇跡』が、そこにはあった。


「――っ! 陛下、もしやその子は……?」

「カース……殿、か……。ああ、神よ……。この子は……私たちの、最後の希望なのです……」


弱りきった王妃の細い腕の中で、古びた毛布に包まれた小さな、本当に小さな赤ん坊が、スースーと無垢な寝息を立てていた。

帝国への完全なる臣従を拒むため、そして血脈を絶やさないために、彼らが命がけで隠し通してきた――イリアータ王国の正統なる『第二王子』。


『……ちょっと、出来すぎたシナリオね。でも、これ以上ない最高の大義名分カードが手に入ったわ!』


脳内で『私』が、興奮を隠しきれない様子で声を弾ませる。

人質として利用されていた教皇と国王の救出、そして、帝国の血が混じっていない純然たる王国の『未来の王』の発見。

これで、レオンやジュリアスが掲げていた偽りの大義名分は、跡形もなく崩壊する。

世界を動かす正義の天秤は、今、完全に僕たちの手元へと傾いたのだ。


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基本毎日更新です。

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