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【本編20万字完結】カストラート 〜傾国の歌劇(オペラ)〜【幕間更新あり】  作者: nhhtn
動乱編

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空白の王都


霧が深く立ち込める王都の港へ、アルゴスの誇る無敵艦隊の巨大な影が、まるで巨大な幻影のように音もなく滑り込んだ。

僕と、胸に苛烈な復讐の炎を燃やすカイロネイア軍は、防衛網の崩壊によって大混乱に陥る王都へと、悠然と上陸を開始する。


「……誰もいない。本当に、帝国兵が一人もいないなんて」


かつては我が物顔で街道を練り歩き、市民を蹂躙し、威張り散らしていた帝国兵の姿はどこにもなかった。

見渡す限りの街道は、不気味なほど静まり返っている。

帝国軍の主力部隊がミハイルたちに釣られて西へ向かった今、この街に残されているのは、わずかな数の王国の地方衛兵と、怯え震え、声を殺して物陰に隠れる市民だけだ。

港から進軍する僕たちの姿――純白の衣装に身を包んだ僕と、神聖なオーラを放つカイロネイア軍の神々しい軍勢――が霧の向こうから現れると、市民たちは抵抗するどころか、言葉を失ってその場にポロポロと涙を流しながら跪き始めた。


「か、神の御子だ……!『権天使プリンシパリティーズ』の天使様が、私たちを地獄から助けに来てくださったんだ……!」


街中にまたたく間に広がっていく、僕を崇める祈りの声。

僕たちは剣を抜くことも、一滴の血を流すこともないまま、堂々と王宮の正面玄関へと足を踏み入れた。

――そう、ここはかつて、僕を冷たい地下牢へとハメ落とした、あの忌まわしき因縁の王宮だ。


((ただいま、僕を虐げたすべての人たち。……僕のステージへ、ようこそ))


かつて這う這うの体で逃げ出したその場所に、僕は今、絶対的な救世主として舞い戻ってきたのだ。


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