脳内会議:あえての「現地殴り込み」宣言
自室で荷造りをしていると、脳内の『私』がニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
『ちょっとカース。推薦枠をもらったからって、このまま書類提出だけで大人しく入学する気?』
((え? だって実技パスできるんだよ? 楽だし、一番安全じゃない?))
まだ何かすることがあるのだろうか。
『私』の意図が読めず、目の前の無難で安全な道を選ぼうとする僕。
そんな僕に『私』はビシッと指を指して、再び発破を掛けた。
『ノンノン、甘いわ!これから数年間、死に物狂いで切磋琢磨する同期たちがどんなレベルなのか、この目で確かめておかなくてどうするのよ!それに、最初から『コネ入学のひ弱な貴族のお坊ちゃん』なんて舐められたら、卒業までずっと舐めプされるわよ。ここはーー』
((ーー現地で、一般受験生に混ざって実技試験を受ける、か。ふふ、面白そうだね))
ナメプ?というのが何なのか、正確には理解できなかったが、『私』が言いたいことは伝わった。
つまり、最初から圧倒的な実力を見せつけて牽制し、アドバンテージを取っておけということだろう。
音大生の血が騒ぐ。
そしてその熱に当てられた僕自身も。
この一年間、地獄のレッスンで鍛え上げ、極限まで磨き続けた『僕の身体』が、大陸最高峰の舞台でどこまで通用するのか、試してみたくて全身の血がフツフツと沸き立ち始めていた。
やると決めたからにはとことんだ。
「父上!母上!ロベルト先生!僕、やっぱり普通に実技試験を受けてきます!!」
善は急げとばかりに自室を飛び出すと、大階段の踊り場で報酬の話をしている3人の背に大声で宣言した。
そのままの勢いで玄関扉を駆け抜け、前庭を突っ切る。
「「「はあぁぁぁぁ!!?」」」
後ろから三人の驚天動地の絶叫が響き渡る。
母上がショックで卒倒するのが視界の隅に映った。
大変、実に、心から申し訳ない気持ちになったので、
「必ず特待生で合格して帰って来ますから!それを僕の完全回復のお祝いとしてください!」
と、すでに聞こえていないであろう母上に向けて叫んでおく。
「「何を考えているんだ!?」」という男二人の絶叫を背に、僕はあらかじめ侍女に手配させておいた王都行きの馬車へと文字通り飛び乗ったのだった。
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