甲斐甲斐しい看病
そんな僕のどん底の時間を、嫌な顔一つせず、それどころか溢れんばかりの慈愛で甲斐甲斐しく支えてくれた人たちがいた。
一人は、アイシャ。
戦火に赤黒く燃え盛る神殿をくぐり抜け、僕がこの手で救い出した、神王国の巫女の少女だ。
彼女は、倒壊した石柱に潰され、不自由になってしまった自身の脚を痛々しく庇いながらも、毎日僕の部屋へと通い、丁寧に温かいスープをスプーンで僕の口元へ運んでくれた。
「カース様。あの日、絶望の淵にいた私の手を引き、焼け落ちる神殿から連れ出してくださったのは、他でもない貴方です。……だから今度は、私が貴方を暗闇から連れ出す番です。いつまでも、何度でも、迎えに来ますから」
そしてもう一人。
フラネル内戦を終結に導いた稀代の英雄として、今や国家元首並みの過密スケジュールに追われ、多忙を極めるはずのミハイルも、わずかな暇を見つけては僕の部屋を訪れてくれた。
彼はベッドの脇に静かに腰掛け、心労や栄養失調で細くなり傷んでしまった僕の髪を、櫛で優しく労るように梳かしてくれた。
「カース。僕は君の歌声に救われ、君の背中を見てここまで走ってきた。世界中が君の声を待っている。……でもね、僕はただ、君という親友が笑ってくれるだけでいいんだよ」
誰もが僕に「もう一度歌ってほしい」と、切なる願いをその瞳に宿していた。
けれど、かつてあれほど愛おしく、僕の唯一の誇りだったこの『奇跡のソプラノ』は――いまや父上から投げつけられた『去勢された化け物の産物』という呪いにしか思えなくなっていた。
歌おうとすれば胸が締め付けられ、息が詰まる。
僕は、あれほど自然にできていた喉の震わせ方すら、完全に忘れてしまっていたのだ——。
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