捕縛
「響け、僕たちの反撃のファンファーレ!怒りに燃える戦士たちに、神の勝利の祝福を――ッ!!」
僕は同盟軍の軍楽隊長として、鉛玉と火花が飛び交う最前線に立った。
崩壊した神殿の、まだ熱い瓦礫の頂へと駆け上がり、味方の士気を極限まで跳ね上げる、苛烈にして美しい凱歌を戦場へと響かせる。
僕の背中には、先ほど崩れゆく神殿から命がけで助け出した巫女の少女――アイシャの、帝国への激しい怨念を孕んだ復讐の祈りが、凍てつく業火となって宿っていた。
「御子様が、御子様が我らのために歌っておられるぞッ!」
「進めェ!異教徒の首を刎ねよ!!」
「「「うおおおォォッ!!!」」」
僕の歌声によって完全に狂戦士と化した神王国の軍勢が、猛烈な勢いでトラッド辺境伯軍を蹂躙していく。
激戦の末――『ABC同盟』の圧倒的な兵力差、そして民衆の狂気的なまでの復讐心の前に、帝国軍の殿は完全に壊滅。
煙が立ち込める戦場の中、僕はついに、血と泥にまみれ、自慢の家伝の剣を無残にへし折られて地面に組み伏せられた男――実の父親であるルドルフを『生け捕り』にすることに成功したのだ。
「……カ、カース……お前、まさか本当に……」
驚愕に目を見開く父を冷たく見下ろし、僕はただ一言、「連れて行って」とだけ告げた。
戦後、僕は拘束した父ルドルフを伴い、ミハイル率いる義勇軍が『親帝国派』を圧倒し、内戦を完全に優位に進めていたフラネル共和国へと渡った。
身元の安全を確保し、父を共和国の地下深くにある厳重な監獄へと連行するためだ。
――だが。
冷たい鉄格子の向こうで、捕虜となった父の口から語られたのは……僕の想像を絶する、あまりにも残酷なトラッド辺境伯家の『裏の真実』だった――。
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