表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カストラート 〜傾国の歌劇(オペラ)〜  作者: nhhtn
動乱編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

126/247

半壊の迷宮


僕は周囲の静止を振り切り、黒煙の立ち込める半壊状態の大神殿へと単身飛び込んだ。

かつて静かに歩いたあの暗い通路は、今や崩落した瓦礫で無残に埋め尽くされ、天井の隙間からは絶え間なく轟々と火の粉が降り注いでいる。

熱気と有毒ガスで息が詰まりそうになる中、僕は喉が張り裂けんばかりの声で叫び続けた。


「アイシャ!どこだ……どこにいるの、アイシャーーッ!」

「カ……カース……様……?」


ゴホゴホと激しい咳き込みと共に、薄暗い通路の奥、崩落した巨大な石柱の影から、微かな声が聞こえた。

煙を掻き分け、必死に駆け寄った僕の目に飛び込んできたのは――倒れた大理石の柱に右脚を激しく潰され、血を流して身動きが取れなくなっている彼女の姿だった。

煤に汚れ、苦痛に顔を歪めながらも、彼女は僕の姿を認めると、あり得ない奇跡でも見たかのようにその大きな瞳を潤ませた。


「お逃げ……ください……。私のような、神の器は……ここで神殿と運命を共にするのが……巫女としての、誉れ……」


弱々しく、消え入りそうな笑みを浮かべ、生を諦めかけた手で、彼女は僕の頬にそっと触れようとした。


「愛する、カース様に……イジェプタの、大いなる加護があらんことを……」

「――馬鹿なことを言わないでッ!!」


僕は喉への負担も、天使としての品位もすべて忘れて激昂した。

カストラートとして、エゴまみれの大人たちに『呪い』のような歪な人生を背負わされた僕が、同じように理不尽に未来を奪われた彼女を、ここで世界の不条理に大人しく明け渡してなるものか!


「神の器なんかじゃない!君は、アイシャという名前を持った一人の人間だ!死なせない、絶対に僕が君をここから連れ出す!!」

『カース、柱を持ち上げるのよ!あそこの支点に体重をかければ、今のあなたの身体でも10秒だけ隙間を作れるわ!』


脳内で『私』の計算が弾き出されると同時に、僕は火事場の馬鹿力で巨大な石柱をわずかに持ち上げた。


「くっ……あああああッ!!」


骨がきしむ音を無視して隙間を作り、彼女の身体を強引に引き抜く。

そして、以前よりは少しだけ頼もしくなった自分の背中へと、その小さく軽い身体を迷わず背負った。


少しでも面白い、続きが気になると思ってくださったら、ブックマークや評価(☆☆☆☆☆)で応援していただけると大変励みになります!

基本毎日更新です。

今後もよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ