驚愕の聖都
神殿の薄暗い石造りの通路を、一歩、また一歩と進んでいく。
その歩みに合わせるように、外の広場から地鳴りのように響く群衆の怒号が、ビリビリと鼓膜を震わせた。
「神を裏切った同盟を即刻破棄せよ!」
「異教徒に魂を売った腐敗神官どもを、今すぐここへ引きずり出せ!」
――ゴゴゴ……と重厚な石門が開き、僕の影が夜の広場へと現れた、まさにその瞬間。
最前列で松明を掲げていた暴徒たちから、容赦のない野次と罵声が濁流のように飛んでくる。
「おい、奥から誰か出てきたぞ!」
「神官どもの身代わりに立たされたガキか!?目障りだ、引っ込め!」
ひゅん、ひゅん、と夜風を切る不穏な音がして、僕の足元にいくつかの尖った石が投げつけられた。
そのうちの一つが、純白の衣装の裾を鋭く掠める。
けれど、僕は一歩も引かなかった。
怯えることすら忘れたように、ただ前だけを見つめる。
松明の赤黒い炎に妖しく照らされながら、僕が通路の闇を完全に抜け、広場の中心へと堂々と進み出た――その時だった。
月明かりの下で露わになったのは、最高神イジェプタの地上での姿を完璧に模した、純白のシルクと緻密な金の刺繍に彩られた至高の衣装。
そして、同じ深い闇を抱える巫女の少女から託された、神聖なる耳飾りがチャリ……と、夜の静寂に美しく煌めいた。
「――っ!?」
次の瞬間、僕に罵声を浴びせていた民衆の動きが、まるで時が止まったかのようにピタリと凍りついた。
狂気的な怒号に代わって、ざわざわと、さざ波のような『どよめき』が瞬く間に数万の群衆を埋め尽くしていく。
「あ、あり得ん……。何だ、あの姿は……あの神々しさは……」
「まさに我が国の最高神、イジェプタ様そのものではないか……!?」
ほんの数秒前まで暴動の炎に包まれていた広場が、一人の少年の『圧倒的な神聖さ』の前に、静まり返っていくのだった。
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