神の僕、共通の闇
「カース様、そのお声……本当に清らかで、美しい。私、深く感動いたしました。あなた様も、私たちと同じ『神の所有物』なのですね……」
「え?『神の所有物』……?同じ……?」
僕が小首を傾げると、彼女はどこか悲しげに長い睫毛を伏せ、純白の法衣越しに自らの下腹部へとそっと手を当てた。
「イジェプタの巫女はみな、子を孕むことができません。私も、物心つく前の幼い頃に神殿の処置を受けました……。一生を、最高神イジェプタに仕えるためだけに生きるように、と……」
その瞬間、僕の背筋に氷水を流し込まれたような冷たい戦慄が走った。
――「人工不妊」。
それこそが、カイロネイア神王国が誇る、純潔にして「聖なる巫女」たちに課された、あまりにも残酷な裏の真実だったのだ。
神への絶対的な忠誠と純潔を物理的に保証するため、彼女たちはまだ何も分からない幼少期に、その身体に呪術的な、あるいは医学的な処置を施され、女性としての、人間としての未来を永遠に奪われていた。
((そんな……!彼女たちも、僕たちカストラートと同じだというのか……。大人の都合や宗教という巨大な大義名分のために、本人の意思なんて関係なく、取り返しのつかない形で身体を傷つけられて……!))
込み上げる激しい憤りと悲しみに、僕はドレスの裾を強く握りしめる。
『……信じられない。どの世界、どの時代、どの歴史を覗いても、神聖さを謳う組織の裏には必ずこういう「不可逆の犠牲」が転がっているのね……。彼女たちの血と涙、奪われた未来の上に、この神王国の信仰は成り立っているんだわ』
脳内の『私』の声も、かつてないほど悲壮な、しかし深い怒りを湛えて震えていた。
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