救世主(?)、現る
ジュリアスが去った三日後。
入れ替わるように、父上の要請に応じて、音楽院が推薦した家庭教師が我が家にやってきた。
現れたのは、仕立ての良い衣服に身を包んだ、いかにも神経質そうな中年男性、ロベルト先生。
かつて『サントマリオ・ピエタ・カプアナ音楽院』で学んだ大先輩であり、在学中は首席争いの常連だったという、輝かしい経歴を持つ実力派教師だ。
彼は僕を一瞥するなり、フッと鼻で笑った。
「カース様。私は容赦いたしませんよ?あなたが目指すのは、天才や怪物が大陸中から集まる最高峰の音楽院。通常なら十年かけて基礎から叩き込むカリキュラムを、たったの一年で全て詰め込みますからね。覚悟なさい」
おぉ、厳しいお言葉。
お決まりの洗礼というやつだ。
だが、僕は思わず笑い出しそうになるのを必死で堪えていた。
なぜなら、彼の目は『金貨の山』を前にした商人のようにギラギラと輝き、心の声は僕に筒抜けだったからだ。
((フハハハハ!辺境伯閣下から「もしあの出来損ないの長男を『サントマリオ・ピエタ・カプアナ音楽院』に合格させたら、今の三倍の報酬と王都の一等地に音楽スタジオを建ててやる」って言われてるんだよ!どんなに泣き叫ぼうが関係ねえ、お前を絶対に合格させて、俺は億万長者になってやるからなァーーー!!))
なるほど、父上も粋な真似をする。
先生の脳内が完全に欲望のゴールドラッシュに染まっているのを確認し、僕はあえて完璧な営業スマイルを返した。
「……望むところです、ロベルト先生。どうぞ、手加減なくお願いします」
よし、利害関係は一致している。
地獄の熱血指導(物理)を迎え撃つ準備は万端だ。
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