空っぽの海
ブリタニア女王グロリアーナの直々の勅許、そして『女王の切り札』という最上級の肩書きを得た僕は、次なる目的地『アルゴス=カスティエラ連合国』へ同盟を打診するための『国家特使』の一員として、再び広大な海へと乗り出した。
「ガハハハハ!まさかまたお前の極上の歌が聴けるとはな!人生、何が起こるか分からねえもんだ。最高に嬉しいぜ、カース!」
船の舵を豪快に握るキャプテン・スカロが、満面の笑みで豪快な声を響かせる。
そう、女王グロリアーナは、道中の突発的な襲撃、あるいはローデンブルク帝国の息の掛かった刺客による妨害を警戒し、最新鋭の砲をこれでもかと備えたスカロの最強私掠船を、使節団の護衛艦として手配してくれたのだ。
『まさに至れり尽くせりね!スカロの船なら戦闘の実力は折り紙付きだし、何より私たちにとって船上生活のQOLが爆上がりだわ!あのキャンプ風の無水肉煮込み、また作って一味を胃袋から手懐けちゃいましょ!』
((ふふ、そうだね。でも『ミーナ』、緊張感だけは持たないと。相手はブリタニアと長年、海上で血で血を洗う諍いを続けてきた、あの『アルゴス=カスティエラ連合国』なんだから……))
ピリピリと緊迫した面持ちのまま、ついに両国の国境にあたる厳戒海域へと進入した僕たち。
それこそ、いつ水平線の向こうから敵の主力艦隊が現れ、挨拶代わりに先制の斉射を喰らってもおかしくないと、全員が武器を手に身構えていた。
――しかし。
僕たちのそんな最悪の予想に反して、連合国の海軍は、こちらに一切の大砲を向けてこなかったのだ。
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