世界を揺るがす逆転外交
「陛下、現在ブリタニアは、新大陸への進出と制海権を巡り、南方の強国『アルゴス=カスティエラ連合国』と激しく対立しておいでですね?」
僕の言葉に、周囲に控える重臣たちがピクリと眉を動かした。
「ですが、いまや大陸はローデンブルク帝国の手に落ちようとしています。もし、我がトラッド辺境伯領を手に入れた帝国が、そのままフラネル共和国と共に海へ進出すれば、ブリタニアもアルゴスも、『単独では』一網打尽に飲み込まれることでしょう」
僕は胸の前で優雅に手を組み、謁見の間の隅々まで響き渡る、朗々と、かつ絶対の説得力に満ちたソプラノで告げた。
「そこで提案です。ブリタニア諸王国は今すぐ、宿敵である『アルゴス=カスティエラ連合国との同盟』を締結すべきです!」
「なにいっ!宿敵と同盟だと!?」
「馬鹿な、あの傲慢なアルゴスが我が国と手を結ぶなど、首を縦に振るわけがないだろう!」
瞬時に気色ばんだ重臣たちの怒号を、僕は冷徹で鋭い視線ひとつで制する。
『前世の世界史が証明してるわ。共通の「圧倒的にヤバい巨大な敵」が現れた時、過去の小競り合いなんて一瞬で吹き飛ぶのよ!利害さえ一致すれば、かつての宿敵だって最っ高のビジネスパートナーに変わるわ!』
脳内の『私』とシンクロしながら、僕はさらに畳み掛けた。
「アルゴスは、僕の所属していた『SMPC音楽院』及びロムルス教会の熱烈な信奉国です。そして幸いなことに、『権天使』の一角である僕の友人は現在、彼らの隣国であるフラネル共和国に人質同然で囚われている……」
不敵な笑みを、今度は僕が女王陛下に向けてみせる。
「僕が『権天使筆頭』の知名度とブランドを使い、アルゴスを動かします。ブリタニアの海軍力、アルゴスの無敵艦隊、そして僕が指揮する大陸の反帝国潜在勢力――。この三つが合わされば、帝国の野望など、一瞬で海の藻屑に変えられます!!」
僕の堂々たる大演説が、張り詰めた謁見の間を静まり返らせた。
女王グロリアーナは、顎を引いてしばらく僕をじっと見つめていたが……。
やがて、その薄い唇を妖艶に、そして酷く愉しげに釣り上げた。
「フッ……スカロの言った通りだ。ただ綺麗に鳴くだけの歌うたいかと思えば、とんでもない国家転覆級の怪物を連れてきたものだ。良いだろう、カース・ディ・トラッド。その大博打、我がブリタニアが乗ってやろう」
――勝負は決まった。
ジュリアス、そしてレオン。
君たちが大陸をチェス盤のように弄んで、僕を袋小路に追い詰めたつもりなら。
僕は『世界規模の超国家同盟』という、盤面そのものをひっくり返す巨手を指させてもらう。
世界を巻き込んだ壮大な反撃のメロディが、今、霧の国から鳴り響こうとしていた。
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