謁見:絶対女王
案内されたのは、黒と銀を基調とした、息を呑むほど厳かで冷徹な意匠の謁見の間。
その奥、天井高くそびえる玉座に君臨していたのは――年の頃は30代半ば、冬の月を思わせる冷徹な美貌と、すべてを見透かすような鋭いターコイズの瞳を持つブリタニアの絶対君主、グロリアーナ女王陛下であった。
「スカロ、我が忠実なる海の狼よ。して……その隣にいる、可憐なカストラートの少年が、お前が連れてきたという『大陸の大悪党』か?」
静寂を割るように、女王のひどく冷たい、しかし心地よく通る声が響く。
僕は一歩前に出ると、かつてトラッド辺境伯家で叩き込まれた完璧な美しさを誇る貴族の礼を執り、潮風に汚れた外套をドラマチックに脱ぎ捨てて彼女を見据えた。
「お初にお目に掛かります、グロリアーナ女王陛下。私は『SMPC音楽院』のカース・ディ・トラッド。……本日は、偉大なるブリタニア諸王国が、ローデンブルク帝国の傲慢な軍靴に踏みにじられぬよう、我が身に『勝利の処方箋』を携えて参りました」
「ほう……?大陸を追われた没落亡命貴族の小倅が、我が国を救うと?面白い、言ってみよ」
女王がフッと口元を歪め、退屈しのぎの玩具を見つめるように頬杖をつく。
その瞳の奥には、一歩でも踏み外せば即座に首を刎ねかねない絶対強者の鋭利な光が宿っていた。
――さあ、ここからが僕と脳内の『私』の本領発揮だ。
ただの情報提供では、ブリタニアという老獪な国家に『都合よく利用されて終わり』になる。
僕がこの場で提示すべきは、迫り来る帝国、そして王国を裏切ったジュリアスの思惑を根底からひっくり返し、世界を再構築するに足る、大がかりな『外交のグランドデザイン』だった。
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