斡旋所
サマラフたちはパシェット家を出ると、待機させていた馬車に乗って、中央広場まで戻った。
そこからは宿屋へ戻る途中にある武器屋、防具屋、道具屋へ寄り道。いいなと感じた物の金額を見つけたら財布の中身と相談。今回は装備品を売却して新たに購入しようにも額が足りないとわかり、一旦、店を出ることに。
「拙者、あの飛び道具が欲しかったでござる。魔物退治を頑張るでござるから、二人とも、購入に協力してくれぬか?」
「じゃあ、依頼を探しに斡旋所に行ってみるか」と、サマラフは提案。
カニヴは不思議がる。
「酒場ではなく?」
「あぁ。クォン•タユの酒場では、冒険者向けの仕事の受注と発注をしてはいけないことになってる。酔った勢いで店の外に出た受注者が、街から出る前に凍死した姿で発見されたという話が過去に何件もあったのさ」
「グロいでござるな」
サマラフは苦笑いを浮かべた。
「禁止にしたのは死亡率を下げるのが目的だが、騎士団の仕事を無駄に増やさないためでもある」
「先王の政策でござるか?」
「いや。現王が決めた」
「拙者、イ国生まれで良かったでござる」
シュノーブでは特に夕方以降、酒場と飲食店は、客に提供できる酒の種類と量が限定される。日中は緩い。
自宅、または宿屋で呑む分には構わないが、酔った状態で夜間に外出し、騎士団や医者の世話になった場合、迷惑料を支払うことになっている。
「それで、斡旋所とは?」
サマラフは立ち止まって周辺を見渡し、建物を指差す。
「彼処だ」
なかに入ってみると、冒険者が十八名、条件が合う依頼は無いか探しに訪れていた。
酒場のような賑やかさは無く、何処か静かな圧を感じさせる落ち着きのある上品な内装。ノリで請け負おうとする者は居ない。
「ご利用は初めてですか?」
案内役の女騎士が話しかけてきた。
「うむ。初心者でござる」
「此処では、シュノーブの騎士団が請けた依頼を、冒険者である皆様方が代行して解決することができます」
「つまり、おこぼ。むぐ」
サマラフは手を使ってカニヴの口を塞ぎ、最後の「れ」を言わせなかった。
女騎士は、ふふっと笑う。
「ご不満であれば店で請け負うことも可能ですが、その分、報酬額は子ども並みとは言わないものの、大半がお小遣い程度の額にしかなりません。
斡旋所のほうが旅費を稼ぐには持ってこいだとわかって戻られる方、結構多いですよ?」
セティナは壁に貼られている依頼書を見る。簡単そうな物だと、呪文刑吏の実験に付き合うというざっくり書かれた詳細不明の物から、飲食店で使ってみたい高級食材の調達といった物まで色々ある。
「解決策や結果が素晴らしければ、騎士団側から『色』をお付けします。こなしてくださった数と難易度次第では、上級騎士が手こずるレベルの高い仕事や護衛といった特殊な内容のお仕事を紹介させていただきますが、如何でしょう?」
時間の都合上、今日中に完遂するのは無理。相談窓口担当の騎士から、期限切れになるのが八日後ならどうかと訊かれたサマラフは頷き、此方の条件に合った依頼を探して貰った。
「滞在期間が十日間もあれば、終わらせることができそうだな」
「えいえいおー!で頑張るでござる!」




