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第十五話

―Side ゼン―


「普界はどうだったんだ、ゼオラン=ランデルエルドよ」


無能な愚王が俺の本名を口にする。


俺は愚界に王都バウンレイドにある王座の間にいる。

普界より帰ってきた俺に愚王が下僕を使ってここまで連れて来さされたのだ。

俺はこの王が嫌いで仕方が無い。はっきり言うと俺は歴代の中で愚者以降のヤツは王とは認めていない。


俺が生まれたのは世界が引き裂かれた後。

三つの世界が未だに見つけることができていない存在するはずの世界"間界(かんかい)"から間人である俺の母が神隠しにあい、愚界に呼ばれてしまった。

その直後に愚界の生きる伝説と言われている化け物、五鬼(ごおに)の一角である風鬼に犯され、その腹に子を身篭ったことによって俺が誕生した。


俺達は暫くの間王都の外にある村で生活をしていた。

俺が物心付くまでは平和だったんだ。愚者が死ぬまでは・・・

愚者が死に、新たな王が決まるとこの世界はおかしくなった。

平和を保っていた今までの愚者の平等社会が新たな王の働きにより王を中心とした格差社会となった。


その社会は村にも影響を与えてしまう。

村に住む愚人達は間人とその子どもである俺達を嫌うようになった。

さも当然のように俺達を奴隷のように扱い、まるで自分達より下の存在でも見るような目を皆がしている。

俺の心に怒りの感情が込み上げてくる。

例えよそ者だとしてもあいつらが俺達を虐げる権利は何処にも無い。

俺は常に今にでも村にいる愚人すべてを殺そうと思っていた。

だがそんな俺を母はいつも


『よそ者の私達を居させてくれているのだからむしろ感謝をしなくてはならないのよ』


と言って止める。

だから俺は怒りを押し止める事ができていた。



あの日・・・母が死ぬまでは。



母は村の広場に血だらけの死体となって横たわっていた。

周りには愚人達が狂った笑顔と汚物を見るような目で死体を眺めている。

一人の男が俺を見つけると、母に近づいてその顔を踏み付ける。

そして俺にこう言った。


『化け物は早く出て行け』


そいつはこの村の村長であった。

俺達がこの村に居れたのもこいつのおかげであり、俺達の事情も正体も知っていた。

村長もまた狂って来ていた。

その時知ったのだが、村長は俺達に出て行くようにいつも母に言っていた。

しかし母は俺が自立できるようになるまでは居させてくれるよう頼んでいたそうだ。

村長はそんな母の心に漬け込み、労働や服従・・・最終的には体まで要求した。

だがそんな関係にも飽きがきた。

村長は村人に広場の陰に隠れさせ、広場に来る母をを殺すように言った。

村人は何の躊躇いもなくその命令に従っい、そして母を殺した。


俺は怒りを止める事ができなくなり、すべてを壊していった。

その時の事は良く覚えていない。

気が付いた時には原型を無くした死体と破壊された家屋だけだった。


その後村の騒動に気が付いた王都の愚王直属の暗部の刺客が俺を拘束し服従を誓わせると、この体を封印した。


五鬼は神出鬼没であり、会話することができないうえ殺そうとしてもその力は強力であり言い伝えによれば不老不死だという最強の古代生物。そのためその力を手に入れる事はできない。

しかし五鬼と人のハーフである鬼童子(おにどうじ)は言葉が通じるうえ五鬼の力を余すことなく受け継いでいる。

だからこそこの力を失ってしまう事を恐れた愚国は兵器としてこの措置を取った。

この封印は施されているとその間は成長が止まってしまう。

だから歴代の愚王は必要な時に俺を目覚めさせこの力を使った。

そして役目を終えると再び眠りにつく。その繰り返しだ。


ある時は内乱の鎮圧。


ある時は政権争いの切り札。


ある時は賢界との戦争の兵器。


ある時は・・・限が無い。


どれもこれもが争い事――


あるものは怒り妬み憎しみ苦しみ――


例外は無く、すべてがなにかを壊す行為だった。


もうこんな事は嫌で仕方がない・・・



だがあるとき転機がやって来た。

賢者の封印場所の特定ができたことだ。

俺は愚王の命令を受け、普界の日本の北海道に向かった。

その場所は人の気配のしない場所。

綺麗な星空に見たことも無い冷たいものが浮いていた。


(これが雪ってヤツか・・・)


愚界のには水を応用して氷を作りそれを体に纏わせて戦うヤツもいた。

だがこれは違う。前者は戦いの為の力だがこれはなんの力も無い無害な代物だ。


「生まれるんだったら雪みたいなヤツが良かったな・・・」


だれも傷つける事の無い無害な存在。

そんなヤツでいたかった・・・

誰もが傷つき傷つけあう事の無い平和な世界であって欲しかった・・・



「・・・・・・」


賢者の封印されている遺跡を見つけた。

俺は中に入り、棺を見つけた。

その箱には封印の術式がかけられており、それは間違い無く賢術のモノだった。


(なんか似てるなこの術式・・・)


この術は俺にかけられている術式にとても似ている。

だが何かが足りない・・・


「成長が停止していない・・・」


足りないものはすぐ分かった。

この術に足りないものは生物の成長を停止するシステムが欠けているだのだ。

元来、物体干渉に優れる賢術には生物をそのままの状態で保つことができなかったのだ。

ゆえに俺みたいに意識や体の成長に欠かせない血流循環や栄養の消費や呼吸等の生命活動を強制的にシャットダウンしているような状態では無く、この中に入っている者は意識こそあれ、今もなお生命活動を行っている。

栄養や水分や酸素の補給もせずに何千年も時間が経過している事になる。


「不味いな・・・」


とても危険な状態だ。

これじゃ賢界への牽制にもならなくなる。

俺はすぐに封印を解き、中を確認した。


「えっ・・・」


中にいたのは子を身篭った女性だった。


「こいつが賢者・・・」

「・・・ここは・・・何処なのですか・・・」

「!?」


しゃべった・・・!?

・・・まあ喋るか人間だし。

停止していないと言っても時の流れはかなりスローペースだったようだ。



「お・・・えっと、あなたは賢者で間違い無いんですよね」

「えっ、えっと・・・はいそうで・・・したっけ?」

「・・・・・・」


イライラしてきた。


「ちょっと、そんな怖い顔して睨まないでください~」

「もう一度聞きます・・・。あなたが賢者なんですよね・・・」

「・・・えへへ~」

「えへへへ~」


惚ける女性の頭に俺は拳骨をお見舞いしてやった。


「い、痛い。殴らないでください~」

「さっさと答えてください・・・」


なんかイメージと違う・・・

賢者って呼ばれてるんだぞ。賢国最強だぞ!。愚者と対等な強さなんだぞ!!。

なのになんでこんなへんな娘なんだ・・・


「・・・そう呼ばれていた事もありました」

「呼ばれていた・・・?」

「私・・・その呼ばれ方好きじゃないんです・・・。なにも救えなかったのに・・・寧ろ誰かを傷つけてしまったのに賢者なんて呼ばれたく無かったです」

「・・・・・・」

「平和を望んでいるのに・・・平和の為だと思って戦ったのに、結局は何の解決にもなってなくて・・・逆に悪化させていただけだったんです」

「・・・・・・」


こいつは自分を責めている。


すべては平和を築くため。


すべては国の幸せのため。


すべては民の笑顔のため。


それを理想にして我慢して戦ったのに成就する事は無い。

憎しみにつぐ憎しみを生み、いつまでもいたちごっこなのだ。


「あんたの力は何のためにある」

「えぅ?」


俺は目の前にいる娘に質問する。


「・・・みんなが笑顔でいられる争いの無い世界かな」

「・・・俺にその力をくれないか?」

「えっ・・・」


決心がついた。

最初から自分でやればよかったんだ。

今までは考えるだけの、ただ逃げていただけだ。

考えるだけでなく実行をしなくてはならない。

これは力を貰わなくても変わらない。



「俺が変えてやる」


「いいですよ」


あっさり!?


「いいのかよ、俺達初対面だぞ!?。悪用するかも知れないんだぞっ」


自分が頼んだことだがここまで簡単に答えられるとちょっとな・・・


「目を見れば解ります。貴方にならこの力を託せます」

「・・・・・・」


ありがとう、信じてくれて・・・


「お前名前は・・・」

「私はメイルアイナ=ライトニング=ワイズ、アイナでいいです。貴方は?」

「俺はゼオラ・・・いや違う。俺の名は・・・乱土全だ」

「ヘンな名前~」

「うっさい!」


もう昔の名前を捨てる。

これから新しい道を歩んで行くんだ。

だからこその新しい名前だ。


「でもどうやって・・・」

「そこは心配無用だ。俺の力で

「あああああああああああああああああああ――!!!!!!!!!」

・・・どうした!?」


アイナは膨らんでいる腹を抱えながら悶えている。


「おい、大丈夫か?しっかりしろ」

「だめ・・・近づかないで・・・」

「おい!!」

「いやあああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア――!!」


アイナから膨大な闇の魔力が溢れ出てくる。

地震がおき、遺跡が崩れる。

俺はすぐに遺跡から飛び出した。



『ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア――!!!』


遺跡から飛び出ると地震は止まり、遺跡の入り口は崩れ去っていた。

すぐにアイナを助け出そうと遺跡に向かったが下から負の気配を感じた。

そして下から巨大な化け物突き出てきた。



そして賢者と呼ばれる事を嫌っていたアイナは暴走した。



事態は間道率いるジェネラル第四部隊によって収拾され、賢者の暴走として後の裏の歴史に刻まれた。


俺は愚界に帰還し、眠りにつかされた。




「目的のモノは見つかりませんでした」


今回の普界に赴いた理由は日本にあるあるもの探すことだ。

勿論そんなことはしていないだ。まあちょっとは捜したがな・・・

正確にはアイナが産み落とした子の居場所がある程度特定出来たからその捜索だ。

暴走の鎮圧後、俺はアイナが産み落とした子どもを抱えて帰還する間道を見た。

俺はすぐに蛇をばら撒き、探すように命令した。

そして眠りについた。


四年後、再び目覚めた。

理由は賢者の暴走の責任を取らせるためだ。

内容は単純、王の命令を遂行すること。

俺は雑務をこなしながらアイナの子を蛇を使って懸命に探し出した。

起きてから十二年、合計十六年も掛かってしまった。

あの日から十六年後、俺はある物の捜索と言う嘘をついて再び普界へ向かった。

そしてようやく間者を見つけ出すことができた。


「早く探し出せよ・・・」


(まるで昔の俺達と村人みたいだった)


あいつの母親を殺すのは気乗りしなかった。

まるで同族を増やすような行為だったからである。

しかし俺は欲しかった。間者の持つ力を。

結局は手に入れることができなかった。


「わかりました・・・」


だが俺は諦めない。

例え俺が何の力も無い無力なヤツだったとしても、この胸に抱えた思いを手放すことは無い。

俺は変えてやりたい、誰もが笑顔でいられる幸せな世界に。

だから俺はどんな手段を使ってでも歩き続けるんだ。


俺の目指す理想の世界に・・・





―Side Out―



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