第十三話
―Side テッセイ―
「活生、無事か…」
俺は緑地へ向かい、緑地中央で一人立つ活生を見つけた。
「父ちゃん…」
「無事で良かった…。早く家に――」
活生に駆け寄り、その手にあるものに気が付いた。
「活生…その剣は」
「いつのまにか握ってた」
「・・・・・・・・・」
あの剣は愚剣ヘル。
世界がまだ一つだった頃、初代愚王が作ったと言われている魔剣。
使えたのは初代と愚者のみで、他のものは握ることすらできなかったそうだ。
つまりそれを使えるということは――
「…間者の覚醒」
「父ちゃん…母ちゃんは」
「死んだよ…」
「・・・・・・・・・」
活生の問いに俺はそう答えた。
「俺のせいで・・・」
「ちがう、それは俺達の問題だ。お前のせいじゃない」
「同じようなもんだろ。俺は父ちゃん達の子どもじゃないんだから…」
「・・・・・・」
たしかに活生は俺達の子ではなく、十六年前に賢者に預けられた子だ。
だけど・・・活生は―――
「…家に帰ろう」
俺は活性に語りかける。
「・・・・・・・・・」
「活生・・・」
「ムリだ・・・もうだめだ・・・」
「えっ・・・」
急に活生から魔力が吹き出て来る。
「不味い―!」
「もうこの剣を止められない――」
そして一瞬にして周囲に黒炎に包まれた。
「守りよっ」
俺はすぐに刻印が刻まれた手袋を右手にはめ、魔力を流し防壁の普術を発動させ、向かってくる炎を殴った。
黒炎は手袋に触れると煙となって消え去る。
しかし――
「うあああああああああああああ――――!」
黒炎と活生の魔力は一向に止まらない。
「活生、今助けてやるからなっ!!」
俺はスーツの懐から賢者に活生のためにと託された三枚の札を出す。
賢札。
物への干渉を得意とする賢人は、武器などを札にして持ち運ぶようになった。
この札には賢界の宝刀である"賢刀"が宿っている。
「普界の門よ、我は普の力を宿す人。我の力に答え――開けっ!」
俺は普界の"システム"より力を取り込むために門の普術を発動させる。
「接続成功――」
力が外部より流れてくるのを感じる。
「賢札発動・・・いくぞ」
三枚の賢札は右手の手袋に吸い込まれ、青く光る。
俺は活生の元へ駆けた。
「封殺――ぐっ」
黒い刀身が突き刺さる。
だが意識が揺らぐことは無い。
それは――
「―――封殺―――」
―俺は活生の父親だからだ!
「――発動――」
―Side Out―
―Side ミナ―
「どうやら、向こうは終わったようだな」
緑地を被い尽くす黒炎は、青い光りに包まれ消えていくのが今いるビルの屋上から見える。
「避けてばかりじゃなくて、向かってきなさいよ!」
男は避けてばかりで全然こちらの攻撃が当たらない。故に埒が明かない…
「嫌だな。普術の打撃強化ですらたちが悪いのに、さらには愚術の身体強化がかかっているのは反則だろう。お前の母親は愚のクオーターだったか・・・」
「どうしてそれを・・・」
「狙う獲物の情報を把握しておくのは当然だろう。それよりも、早く行ってやれ。俺は役目が終わったから帰る」
「ちょっと・・・」
男は背を向け、何処かへ行ってしまった。
「・・・緑地に向かおう」
―Side Out―
辺り一面が黒い火の海に包まれている。まるで俺の頭の中のようだ。
なにもわからない・・・。目の前のことも、自分のことも、何もかもが・・・
突然目の前に青い光が現れたのがわかった。
こわい。あの光がこわい。
光がこっちに近づいてくる。俺はその光に剣先を向ける。
「―ぐっ」
なにかが呻き声をあげる。
それでも光は消えない。
「――封殺――発動――」
左胸に光が入り込み、焼けるような痛みが走る。
しかし、その痛みはすぐに引き、頭の中が正常になっていく。
そして右に握っていた剣がなくなっていた。
「活生・・・」
耳元で父ちゃんの声がする。
「父ちゃん・・・俺は・・・」
父ちゃんが血塗れになっている。
さっきの剣がささってしまったんだ。
「確かにお前は賢者に預けられた子だ。だがな…お前は――」
「――俺の・・・俺達の子だ」
そして父ちゃんは息を引き取った。




