第十一話
「ハアッ!」
聖夢が狼の群れに突っ込み次々と斬り伏せていく。
「今日はちゃんとしたの持ってきたから、折れたりしないよっ」
「…その威勢の良さも何時まで続くかな」
「貴女が死ぬまでよっ」
「試してやろう」
聖夢の頑張りにより、狼によって塞がれていた道が徐々に開いてきた。
「行って!」
「わ、わかった!」
聖夢が声を張り上げ俺に指示する。
それに反応し、俺は道に向かって走る。
「逃がすかっ!」
「―ッ」
しかし目の前から二匹の狼が襲い掛かってくる。
「おらああああっ!」
襲い来る一匹を手に持つナイフで斬る。
しかし二匹目には間に合わない――
「させないっ!」
「貴様…」
そこに聖夢が駆け付け、狼を斬り裂く。
「聖夢、気をつけるんだぞ」
「それは貴方の方でしょ、活生!」
俺は聖夢の横を通り過ぎ、家に向かった。
プルルルル・・・ガチャッ
「もしもし、姉ちゃん」
『活生、今どこっ!』
俺は聖夢と別れて家に向かいながら姉ちゃんと連絡を取った。
声からして姉ちゃんは相当あせっている。
「聖夢とある男を捜してたら、いきなり現れて襲い掛かってきたんだ。聖夢は後から現れたヤツと戦ってて、男は父ちゃんたちを殺しに家の方へ行っちまった…」
『なんですって。活生、今すぐに―キャッ』
「おい、どうした姉ちゃんっ」
電話から姉ちゃんの悲鳴と凄い音がした。
「おい、姉ちゃんっ」
『大丈夫よ。活生、今すぐに家に向かっていなさい。母さんを守ってあげて…』
「……」
俺に何ができるか解らない。守れるかも解らない。
それでも…
「…わかった」
その言葉に俺は答える。
『頼んだわよ、私の弟っ!』
そう言うと電話を切ってしまった。
「よし…」
俺は先のわからない暗闇をひたすら走る。家族を守りたいから…
―Side ミナ―
「頼んだわよ、私の弟っ!」
そう言い、私は電話を切った。
気休めでしかないのだろう…。あの子に何かができるとは思っていない。
それでも…
「愚の…いえ、貴方達の目的はなに…」
私の前にはさっき攻撃してきた青い髪と面を着けた男がいる。
「すべての平和と…そのための力だ」
「力…」
「うちの隊長があの小僧の力を欲している」
「なんで活生なの…」
「間者としか言わないからな…あの人」
「間者…」
賢と愚の混じりあった存在である間人の事は知っているが、間者と言う単語は初耳だ…
いや…今は止めておこう。考える前にやる事がある。
「そこをどきなさい」
「いやといったら」
男はそう言うと愚術による身体強化を発動させる。
「力ずくで…」
私も両手足に付けた普人の扱う刻印武具に魔力を流し込むみ、そしてかまえる。
「通させてもらうっ!」
家族を守るために…私は戦うっ!
―Side Out―
「ハァ、ハァ…」
三枝市の郊外に総菜ヶ丘は位置するが、総菜町側に位置するためそんなにはかからなかった。
でも可笑しい…。
たとえ全力疾走でももっと時間がかかっても可笑しくない。
聖夢と別れてからずっとだ…なぜか知らないが体が異常なくらい軽い。
「母ちゃん、どこだっ」
俺は家に入り居間へ行く。
「母ちゃん、無事――てめぇ母ちゃんをはなせっ!」
「やっと来たんですね。あなたに見せようと思って待っていたんですよ」
そこには母ちゃんの首を右手で掴み上げる乱土がいた。
「なんでうちの家族が関わるんだ」
「だから、仕返しっていってるだろうがっ。十六年前の賢者の暴走をこいつら夫婦に止められたんだよ!」
乱土は口調を変わり、怒り狂った化け物のようだ。
「まあ、昔なんてどうでもいい。大事なのは現在だ」
「母ちゃんをはなせええ!」
俺はナイフを構え、乱土に斬りかかる。
「風よ弾け」
「ぐあっ――」
何かに打たれたような衝撃をくらいナイフは折れ、俺は吹き飛ばされた。
「ぐう・・・」
「驚いた。普通なら潰されても可笑しくはない。身体強化がかかっている。どうやらもう少しのようだな、覚醒のときが…」
「貴方は…愚人のはず…。なのになぜ賢術が使えるの…」
母ちゃんは乱土に問いかける。
愚人…賢術…いったいなんなんだ。
「…しかたない。俺は風鬼と間人のハーフなんだ。だから賢術も多少なら使える」
「数菜っ!」
スーツ姿の父ちゃんが仕事から帰ってきた。
「乱土…。狙いは活生かっ」
知り合いだったのか…。それより狙いは俺ってなんで知ってるんだ…
「と仕返しだ。役者も揃った事だし…そろそろ別れだっ」
乱土が左手を構え―
「「やめろおおおおおおおお!」」
「おらぁあああ!」
母ちゃんの腹を穿った。
「ああ…」
母ちゃん母ちゃん母ちゃん――
「うおおおおおおおおおおおお!」
俺は乱土に殴りにかかる。
「くっ」
乱土は母ちゃんを放し、俺の拳を防ぐ。
だが俺はそのまま窓ガラスの外にある庭まで吹き飛ばした。
「さすがは愚者の力、危険すぎだ。場所を変えよう、三枝緑地で待ってるから…ちゃんと来てくださいね」
そう言うと庭から姿を消した。
「まてっ」
「行くな、活生っ!」
俺は父ちゃんも制止を無視し、乱土を追った。
―Side テッセイ―
「行くな、活生っ!」
俺の制止に耳を貸さず、活生は乱土を追いに行ってしまった。
「クソッ…数菜、生きてるかっ」
俺は数菜に近づく。
「私の心配よりも…やるべきことがあるでしょうっ!」
「―っ」
しかし数菜は俺を近づけさせない。
「早く活生を追ってっ」
「だが…」
「私のことはもういいの・・・、もう長くはないわ…。でも活生や実菜は違う…、あの子達には未来があるの…。それを守るのが私達の役目でしょう…」
数菜は俺に言う。
たしかにそうだ…。あいつらをここで死なせるわけにはいかない…
「わかった…」
俺は数菜に背を向ける。
「今まで、ありがとう…」
「……ええ、私も――」
「……」
そしてその場をあとにした。
―Side Out―




