第十話
現在、ヘンな男釣り上げ作戦(命名は俺)開始から時間が経ち午後九時くらい、
「次で最後にしましょう」と光道が言い、総菜町にある一番見晴らしの良い高い場所である"総菜ヶ丘"に来ている。
どんだけ歩かせるんだこいつは…
「やっとついた…」
「ここに連れてきてくれてありがとう。ここは見晴らしが良くていい場所です」
「どういたしまして…」
ここに来たのも光道の「見晴らしの良いところにつれていきなさい」と言う要望(けして命令ではない)だったりする。
・・・初めて感謝された気がするな。
「男、見つからなかったな・・・」
「本当です。餌が悪かったようです」
「ハァ~・・・」
こいつは悪態しかつけないのか…
「…おまえ、俺とは普通…とは言えねえけど喋るのに、学校ではなんであんなに無口だったんだ」
ちょっとした疑問を言う。
「それは…周囲との関わりを避けるためです」
「なんでだ」
「私の仕事柄、そのような関係を作るとその関わった無関係な人に被害が被る恐れがあるからです」
それがあの無口と俺の感じた寂しさの真意だったのか。
「寂しくないか、そういう生き方…」
こんな優しい子がそんな生き方を選ばなければならないんだ。
「大丈夫です。ミジンコにとやかく言われる筋合いは無いです」
「ミジンコ言うな。現に俺は関わってるままじゃないか」
「貴方は例外です。記憶を消せないんじゃ仕方が無いじゃないですか…。今までもそうして来たのに…」
「なら…俺がその第一号だな」
「えっ…」
なぜだか知らないけど、俺はそんな寂しい思いなんかしないで欲しいと思ってしまった。
「引き返せないんなら仕方ない。だからその第一号に俺がなってやる」
「……」
柄じゃないのはわかっているが構わない。
こんな優しい子が寂しい思いをしなくて済むのなら…
「…不本意ですが、仕方なく第一号にしてあげます」
なるのではなく、されてしまった。
ま、いいかそんなこと。
「んじゃ改めて、間道活生だ。よろしくな」
と笑いながらいうと
「光道聖夢。聖夢でいいから、よろしくね活生」
と微笑みながら答えてくれた。
真夜中を照らす月と後ろで光り輝く総菜の明かりによって、俺により一層その笑みを綺麗に見せた。
「こんばんは。おふたりさん」
「「―ッ」」
声に驚き後ろを見る。
そこには昨夜のヘンな男がいた。
「私が注意を引くからその隙に逃げて」
「なんで俺だけなんだ…」
「貴方を危険な目に合わせたくない…」
「相談とかやめてくださいよ。寂しいのはやだ~なんですから。それにしてもいろいろ動きまわるからから捜すのに苦労しましたよ…。言ったじゃないですか、『会いに行く』って…」
「何の用なんだ…」
俺は男に問いかける。
「その前に自己紹介を…。私は乱土全と言います。用と言うのは、簡単に言えば私ときませんか」
「意味がわからねーよ…」
「えー。めちゃ簡単に言ったんですけど…。そのままの意味ですよ」
「…理由は」
「必要だからです」
やっぱ意味不明すぎてわかんねー
「昨夜の愚狼はお前の差し金か…」
突然聖夢が口を開く。
「そうなりますね。正確に言えば私の部下ですが…」
昨夜の狼はこいつの仕業だったようだ。
「なぜだ…」
「だってあなたが追いかけてくるからじゃないですか。襲わせる標的はあなただけですがね…」
聖夢を狙っただと…
「俺の答えはノーだ。ダチを狙うヤツなんか信用できるかっ」
「活生…」
「……」
「…仕方がありません。あなたの家族を殺しに行きましょう」
「えっ…」
なんて言った…
「聞こえませんでしたか。殺しに行くといったんですよ、あなたの 家族 を」
「ふざけんなっ!。なんで俺の家族が出てくるんだ。用があるのは俺なんだろっ」
「それが大有りなんですよ。もっとも、あなたが拒んだのも理由の一つで、大本の理由は所謂仕返しです」
「仕返しってどう言うことだっ」
「昔話をしている暇はありません。ファング!」
「ハイ…」
男がその名を口にすると、突然面をつけた少女が目の前に現れた。
「ちょっとの間、相手をしてやれ。女の方はいいが間者は殺すなよ。」
「了解。愚の獣よ、我が召喚に答えよ」
お面少女は乱土の言葉に頷き、昨夜の獣を何十匹も呼び出した。
「ではよろしく。あふたりさんがんばってね~」
「まてっ」
男は俺の家の方向に飛んでいった。
「どうすればいいんだ…」
「あなたたちはここで大人しくしてればいい」
お面女が俺たちに言う。
俺にはなにも…
「私が突破口を開く。その間に行きなさい」
「なんで俺だけなんだ。おまえだって逃る・・・
「貴方には逃げて副長…いえ、貴方のお姉さんに連絡をしてもらいます。重要な事なのでしっかりとお願いね」
・・・わかった。任されたよ、その役目」
ここに居ては何の役にもたたない。
なら自分にできることをして家族を守ろう…
「これを…」
聖夢が俺にナイフを渡す。そして背中の服の中から昨日と同じような剣を取り出した。
「行きますよ」
「ああっ!」
そして俺の運命を変える一日の最後が始まった。




