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『ラノベでスッキリわかる!異世界ギルドの人脈を広げる5つの魔法 ~受付嬢アリサのギルド奮闘記~』  作者: ぽてと


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【返報性の原理】奪う前にまず与える「ギブ・アンド・テイク」 4/4

ガーデンパーティーの喧騒から離れ、王都ギルドへと帰る豪奢な貸切馬車の中。

 アリサは、ウォン支店長から受け取った純金製のVIPカードを両手で大切に包み込みながら、いまだに信じられないというようにふうっと息を吐いた。


「すごい……。本当に、私から何もお願いしていないのに、あんな特大の契約が向こうから飛び込んでくるなんて」

「それが『返報性の原理』の恐ろしいところよ」


向かいの席で、シレーヌが馬車の窓から夜の王都の街並みを眺めながら静かに言った。


「ウォン支店長のような成功した大商人は、普段から有象無象のテイカー(奪う者)に群がられているからこそ、他人の『下心』には非常に敏感なの。だからこそ、純粋に価値だけを提供して見返りを求めずに去っていったあなたに対して、強烈な恩義と信頼を感じたのよ」


「……ギバー(与える者)になるって、すごく勇気がいりますけど、本当に最強の魔法なんですね!」


アリサが目を輝かせると、シレーヌは優雅な所作で扇子をパタンと閉じ、スッとアリサに突きつけた。


「ただし、アリサ。一つだけ絶対に間違えてはいけない重要な注意点があるわ」

「えっ、注意点、ですか?」


「ええ。世の中で最も成功するのは『ギバー(与える者)』だけれど、逆に世の中で最も搾取されて底辺に落ちるのも、実は『ギバー』なのよ」

「ええっ!? そ、それってどういうことですか!?」


アリサが驚いて身を乗り出すと、シレーヌは扇子でアリサの鼻先を軽く叩いた。


「誰彼構わず、自己犠牲を払ってまで与え続ける『お人好しのギバー』は、あのザックのような『テイカー』の格好の餌食になるということよ。テイカーは、あなたの親切を当然のように奪い尽くし、決して恩を返さないわ」


「あっ……!」

 アリサの脳裏に、傲慢な態度で「俺に投資しろ」「剣をタダでよこせ」と喚いていたザックの顔が浮かんだ。もし彼に対して親切に「ギブ」をしてしまったら、彼は感謝するどころか、「もっと寄越せ」と無限に要求してくるだろう。


「だからこそ、あなたは『戦略的なギバー』にならなければいけない。相手がテイカーだと見抜いたら、即座に距離を置きなさい。そして、ウォン支店長のように恩を大切にする『マッチャー』や、同じ『ギバー』に対してのみ、惜しみなく価値を与え続けるの。それが、自分の身を守りながら、最強の信頼残高を築き上げる唯一の法則よ」


「テイカーからは逃げて、恩を大切にする人にだけ、惜しみなく与える……!」


アリサは深く、深く頷いた。

 ただ闇雲に親切にすればいいわけではない。人脈作りとは、相手の本質を見極め、本当に信頼できる人たちとの間にだけ「価値の循環」を生み出していく、高度な知的なゲームなのだ。


「忘れないうちに、まとめておかなきゃ!」


アリサはランタンの灯りを頼りにバインダーを開き、今日の凄まじい逆転劇の教訓を、銀色の羽ペンで力強く書き記した。


【私のためのお仕事魔導書メモ


新シリーズ第4の魔法:返報性の原理ギブ・アンド・テイク


人脈が欲しくて「仕事ください」「紹介してください」と要求するテイカーは、誰からも相手にされない!

相手の信頼を勝ち取るためには、奪う前にまず「与える(ギブ)」こと!


【人間の3つのタイプと付き合い方】


テイカー(奪う者):自分の利益だけを要求する人。絶対に近づかない! 逃げる!


マッチャー(バランスを取る者):やってもらったら、お返しをする人。世の中の大半。


ギバー(与える者):見返りを求めず、まず相手に価値を提供する人。


【最強の「戦略的ギバー」になるルール】


初対面では、相手のメリットになる情報や手助けを「無償で」提供する。


その際、絶対に見返りを求めてはいけない(下心は一瞬で見抜かれる)。


相手がテイカーだと分かったら、ギブするのをやめて即撤退する。


恩を返そうとしてくれる相手マッチャーやギバーとの間にだけ、強固な「信頼残高」を築き上げる!


「ふふっ。これでまた一つ、筆頭受付嬢として強くなっちゃいましたね!」

 アリサが満足げにバインダーを閉じると、シレーヌはクスリと笑った。


「頼もしいこと。……さて、次でいよいよ最後よ、アリサ」

「最後の魔法……!」


「ええ。どんなに完璧な『エレベーターピッチ』で自分を売り込み、『オープン・クエスチョン』で会話を弾ませ、『返報性の原理』で相手に価値を与えたとしても……多くの人は、ある一つの『致命的なミス』を犯して、すべてを台無しにしてしまうの」


シレーヌの声が、夜の馬車の中で一段と冷たく、真剣な響きを帯びた。


「人間の記憶のメカニズムを操り、ただの飲み会を『確実な未来の仕事』へと変える、最後の仕上げの魔法。……いよいよ来週は、王都最大の『大総合交流会』よ。そこであなたの集大成を見せてもらうわ」


「はいっ!!」


アリサはバインダーを胸に抱きしめ、力強く頷いた。

 「壁の花」として泣いていた無力な受付嬢はもういない。最強のビジネススキルを身につけた彼女の、人脈構築の総決算が、いよいよ始まろうとしていた。


新シリーズ第4話「返報性の原理編」、最後までお読みいただきありがとうございました!


今回のお話のベースとなっているのは、組織心理学者アダム・グラントの世界的ベストセラー『GIVE & TAKE』の理論です。

ビジネスや交流会では、つい「自分が何をもらえるか」に目が行きがちですが、本当に成功を収めるのは「自分が相手に何を与えられるか」を考え、実践できるギバーです。

ただし、アリサがメモに書いた通り「自己犠牲を払ってテイカーに搾取されるお人好し」になってはいけません。「相手を見極めて、適切に与える」ことこそが、強固な人脈を作る最大の鍵となります。


さて、次回の第5話はいよいよシリーズ最終章、【ピークエンドの法則】の魔法です。

せっかく交流会で盛り上がったのに、その後何も連絡が来ない……そんな「名刺交換だけで終わる悲劇」をどう防ぐのか?

記憶を操り、去り際と素早いフォローアップで相手の心を完全に掴む、最後の魔法の実践編をお届けします!


次回もどうぞお楽しみに!

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