34 どちらも選ばない
「薬が1つしかない!? おいてめぇどういうことだ、なんで……!」
「パーシー! ……どうしてか、説明してもらえますか? 僕ら、必死なんだけど」
やせ形の医者と、丸い医者。僕は2人に詰め寄る。
「材料が不足しているのです。ですから、完全に解毒できるのはたった1人だけでして」
「本当に不足しているの? 出し惜しみしてるわけじゃないのね?」
「はい。ですから本当に……!」
分かった、と僕は声を出す。パーシーは怒りや悲しみがごちゃごちゃになって、フリーズしてる。
「本人たちに、どちらに飲ませるか聞いてきます」
話を聞いた僕は、3人が待つ1階のリビングに行く。
「本当に彼らは……有り得ないよ」
パーシーは錆びついた人形のように、ナタリーは怖々と、リサはゆっくりと僕に視線を向ける。
「どうだったの? ラーフ」
リサにそう聞かれて、2人の言葉を真似る。
「『どちらにも飲ませるな。どちらかだけ生き残るのは、嫌だ』だそうだよ。死ぬなら、2人で。生きるのも、2人で。そういうことだ」
ソファにどっかりと座り込んで、僕は頭を抱える。ここまで、お互いになしに生きられないなんて……!
「バカなの、あの2人!? 相手には生きていてほしいとか、思わないの!? 私たちに、2人同時に失えって言うの!?」
リサの怒り狂う声を貫いて、ナタリーがいいことを思いついたと言わんばかりに声を上げる。
「ねっ、半分こしたら?」
「あら、ホントね」
「あ~、なるほど」
「……え、できるの?」
否定的な声を上げたのは僕だけだった。いやなんでみんな、そんなに受け入れ早いの!?
「ラーフ。ここで動かなきゃ、2人は、死ぬわ。せめて、縋ってみましょう?」
リサの真摯な声に気圧される。そして同時に、納得した。
……そうだ。2人を失いたくない。頼むよ、リィ、イア。




