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ただ純粋な、  作者: 横山裕奈
チェス編 第三章
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34 どちらも選ばない

「薬が1つしかない!? おいてめぇどういうことだ、なんで……!」

「パーシー! ……どうしてか、説明してもらえますか? 僕ら、必死なんだけど」

 やせ形の医者と、丸い医者。僕は2人に詰め寄る。


「材料が不足しているのです。ですから、完全に解毒できるのはたった1人だけでして」

「本当に不足しているの? 出し惜しみしてるわけじゃないのね?」

「はい。ですから本当に……!」

 分かった、と僕は声を出す。パーシーは怒りや悲しみがごちゃごちゃになって、フリーズしてる。

「本人たちに、どちらに飲ませるか聞いてきます」



 話を聞いた僕は、3人が待つ1階のリビングに行く。

「本当に彼らは……有り得ないよ」

 パーシーは錆びついた人形のように、ナタリーは怖々と、リサはゆっくりと僕に視線を向ける。

「どうだったの? ラーフ」

 リサにそう聞かれて、2人の言葉を真似る。


「『どちらにも飲ませるな。どちらかだけ生き残るのは、嫌だ』だそうだよ。死ぬなら、2人で。生きるのも、2人で。そういうことだ」

 ソファにどっかりと座り込んで、僕は頭を抱える。ここまで、お互いになしに生きられないなんて……!

「バカなの、あの2人!? 相手には生きていてほしいとか、思わないの!? 私たちに、2人同時に失えって言うの!?」

 リサの怒り狂う声を貫いて、ナタリーがいいことを思いついたと言わんばかりに声を上げる。


「ねっ、半分こしたら?」


「あら、ホントね」

「あ~、なるほど」

「……え、できるの?」

 否定的な声を上げたのは僕だけだった。いやなんでみんな、そんなに受け入れ早いの!?


「ラーフ。ここで動かなきゃ、2人は、死ぬわ。せめて、縋ってみましょう?」

 リサの真摯な声に気圧される。そして同時に、納得した。

 ……そうだ。2人を失いたくない。頼むよ、リィ、イア。

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