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ただ純粋な、  作者: 横山裕奈
チェス編 第三章
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33 死にかけ

 意識はハッキリしている。ただ、手足は動かない。口はまだ動く。目もまだ、開く。息もまだ苦しくない。

 あとどのくらい、生きていられるのかな。どのくらい、この心臓は動くかな。


「イア! 医者が来たわよ!」

 リサの声がして、バタンとドアが開く。ああやっと聞ける。

「リィは?」

「男子部屋よ。あんたらしいわ。最初に気にするのがリィのことだなんて」

 だって、違う部屋だから様子も聞けない。無事なのかどうかすら、分からない。


「イアータ」

 深刻な声の王さまに、軽口を言う。

「王さま。またリィが怒り狂うかもね。覚悟しといて」

 連れてきたらしい医者が近くにやって来て、診察を始める。


「あとね王さま。私たちがいなくなっても4人で雇って。依頼の難易度は考えてよ。それともし4人が理不尽に殺されるようなことがあれば、データを、ばらまくから」

「……データ?」

 そろそろ言っておこう。言わなかったら、抑止力の意味がないし。

「今までの会話の録音。王さまが失脚しそうだね。だから気をつけてね」

「こんなときに、言うことか? 大した爆弾を抱えていたのだな」

 王さまの声は焦っていた。あー、顔が見えない。詳しく読み取れない。でもこれで……4人が死ぬことはない。



「リィ。医者が来たよ!」

 ラーフの声がして、ドアが開く。医者も入ってきて、診察を始める。てことはもう、国王も着いたか。

「イアは?」

「女子部屋だよ。軽口を叩く元気はある。……リィらしいね。最初に聞くのがイアのことだなんてさ」

 違う部屋で、様子が分からないからな。


「リークス。イアータは恐ろしいな」

「なんだ突然」

「あの状態で、私を脅してきた。もし4人が理不尽に殺されるなら、今までの会話の録音をばらまくとな」

「それがイアだ」

 それだけの答えが、国王は気に入ったらしい。そうかそうか、と笑い始めた。……ったく、こっちは死にかけだってのに。

 そう心の中でぼやいてから気づく。国王の声は、緊張していた。ラーフの声もそうだ。ああ、ホントに死にそうなんだな、俺。

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