第7話:虚構の空(2/4)――「十万人の演算同調」
1. 同調の罠
白鷺迅の指先が天を指すと、祝祭の熱狂は一瞬にして「静謐な統制」へと変質した。学園内に散布された高濃度ナノマシンが、全生徒十万人の脳波を強制的に同一の周波数へと固定する。
「個の思考はノイズに過ぎない。十万の脳を一つのプロセッサとして並列化し、神の演算を完遂させる。これが『再起動』の正体だ」
生徒たちの瞳から光が消え、口々に無機質な数式を唱え始める。彼らの精神エネルギーは空に浮かぶ巨大な「眼」――**中央演算核『デウス・エクス』**へと吸い上げられていく。
2. 白鷺の「神の数式」:プロトコル・オメガ
白鷺の周囲には、既存の物理法則を無視した「白い数式」が幾何学的に展開される。
「九十九黎士、君の『灰色』は定義を消す力。だが、私の『純白』は全定義の統合だ。君が消そうとする端から、私は世界を書き換える」
白鷺が放つのは、オラクル・システムが数十年かけて導き出した究極の解。対象を破壊するのではなく、システムの「一部」として強制的に再定義し、抵抗という概念そのものを抹消する。
3. 十傑の意地
「……勝手に私の脳を使わないでくれるかしら!」
リアが紅蓮の炎を吹き上げ、同調の波を強引に焼き切る。
「僕たちのプライドを『ノイズ』と呼んだこと、後悔させてあげるよ」
九条が偽装空間を展開し、生徒たちの脳波に「偽のデータ」を割り込ませて同調を攪乱する。風間は真空の障壁を作り、物理的なナノマシンの流入を遮断した。
「レイジ、道は作る。あいつのツラに、ありったけの『バグ』を叩き込め!」
4. 灰色の疾走
仲間の支援を受け、レイジは空中に固定された不可視の数式の階段を駆け上がる。
右腕の灰色の痣は、もはや肘を超え、胸元まで侵食していた。一歩踏み出すたびに、レイジの存在そのものが情報の粒子となって崩れかける。
「神様だか何だか知らねえが……十万人の夢を勝手に計算機にかけるんじゃねえッ!」
レイジの拳が、白鷺を守る「絶対定義の盾」へと真っ向から激突した。




