表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/13

進撃の坊主

「公転軌道上に巨大隕石が現れました!」

「直撃確率99.8%!」

「なんてこった……。衝突地点は!?」

「太平洋の真ん中です!」

「なんだ、なら大丈夫だな」

「大丈夫って……どうしてですか?」

「あそこには、天才がいるからだ」





 頂天学校一年ピクニックでは、グループごとに違う場所から、同じ山の頂上を目指す。

 今回登るのは、島の奥にある山、歩児山(ブジサン)。標高二千メートル弱、富士山の半分ほどの標高の山だ。

 最初に頂上に着いたチームには、先生からささやかなご褒美があるらしいが、ただの一般人である俺(あしでまとい)を連れたこのチームは、一位など目指さずゆっくり自分のペースで――


「我のチームがトップでないなどありえん。目指すのは一位だ」

「俺の一人語り聞いてた?」

「宮廷魔法使い、案を出せ」

「違うっす!」


 宮廷魔法使いであることは否定しながらも、マジッカは山を最速で踏破する案を考え始めた。


「飛んじゃだめって先生言ってたし、足を速くする方向で――」

「飛ばなければいいんじゃろう? 任せておれ」


 帽糸は両手を仰向けにし、水球を作り出して、自ら水に包まれた。

 彼女を包んだ水球は、少しずつ大きくなっていき、それと共に中に巨大な人影が現れた。

 深青の、おどろおどろしい巨人。地上に出た、海坊主。


『こ れ で 走 れ ば 頂 上 な ん て 一 瞬 じ ゃ よ』

「良い案だ、物の怪よ。それで行こう」

『み ん な 、 乗 る の じ ゃ』


 巨人になった帽糸が差し出した手に乗って、俺たちは予想だにしない形で出発した。

 体長――正確には分からないが、百メートルくらい、一歩だけで五十メートルは進む。


「ピクニックか、これが?」

「スーパーカーのようなものだ。王にはこれくらいあって当然である」

「当然っすかねえ?」


 障害物をほぼ気にせず、巨体を駆使して超スピードで山を駆けあがっていく。


「……なんかちょっと気分悪くなってきたんだけど」

「高山病であろう。我慢しろ」

「ボクが対処するっす」

「どうやって?」

「風魔法で気圧操作っす。rmaoenaooawmeoanwwidn」


 謎の呪文を唱えたかと思うと、空気が動く感覚があり、高山病がかなり楽になった。

 やっぱり、妖怪も魔法もあるんですね。


「これでボクらの勝利確定っすね!」

「あ、フラグ建った」

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」


 下から声がして、見下ろしてみると、リッキーが凄まじいスピードで障害物を蹴散らしながら山を駆け上がっていた。

 その背中にはグループメンバーが乗っており、俺達と同じ戦略であることが(うかが)える。

 前に追われた時はあんなに速くなかったのだが――校舎内ということで、全力が出せてなかったのか。

 高山病は……医浪がグループにいるから、アイツが治しているのだろう。


「行けリッキー! 優勝賞金はウチらのもんや!」

「抜かれたぞ。もっとスピードは出せんのか」

『こ れ 以 上 は 無 理 じ ゃ』

「速度上昇の魔法はあるっすけど、巨体に対しては効果が薄いっすよ」

「頂上が見えてきたぞ!」


 山の頂上には先生が待機しており、あの人(?)にタッチすることでゴール判定となる。

 残り三百メートルで、リッキーグループ以外に近くにチームはいない。一対一のラストスパートだ。


「といっても、このままだと速度負けするぞ!」

「……物の怪よ、もっと大きくなれんのか?」

『な れ る が 、 一 番 速 い の が こ の 大 き さ じ ゃ』

「構わん。多少減速してもよい、大きくなれ」

『了 解 な の じ ゃ』


 走りながら、深青の巨人がさらに巨大化していく。

 ただ、事前に言っていた通り、大きくなるからといって速くなるわけではなく、段々と遅くなっていった。


「この大きさでいい。魔法使い、我を頑丈にしろ」

「は、はいっす。フォースガード」


 ガンガンと手を鳴らして硬くなった身体を試し、よしと呟いた王は、さらなる指示を出した。


「物の怪、我を投げろ」

『そ う い う こ と か。じ ゃ が 、 ピ ン ポ イ ン ト に 投 げ れ る と は 限 ら ん よ』

「構わん、やれ」


 俺達を乗せた左手から、右手で王を取り上げ、振りかぶる。


「王さん、魔法が使えるボクがやった方がいいんじゃないっすか?」

「なに、我がゴールテープを切りたいだけよ」

『い く の じ ゃ』


 巨人はダーツを投げるように、先生を狙ってコンパクトに王を投げた。

 凄まじいスピードで空中に投げ出される中、ロングスカートで風の流れを操ることで軌道を調整し、先生の元に突っ込む。

 そのセンス、即興力には目を見張るものがあった。


「ヴオオオ!」

「勝つのは、我だ!」


 リッキーが先生に触れる寸前、頭から先生の胸に王が突っ込んだ。

 衝撃で、先生たちは数メートル後方にぶっ飛ぶ。

 ちょっと強引だったけれど、一番最初に触れたのは俺達だ。こうして、レースの勝者は俺達のグループになった。







「そんなわけないでしょう。審判妨害で失格です」

「ですよねー」


 しこたま怒られて、全員が登頂するまで『反省しています』の看板を持って立っていることになった。


「ルールを全て開示しない、悪しきゲームであった」

「書く必要も無いルールだからなのでは?」

「優勝商品欲しかったっすね」

「まあ、仕方ないのじゃ」


 ちなみに、俺達が取りそこなった優勝賞品は、後で作るカレーライスに入れられる、リンゴやハチミツなどの隠し味に使える食材だった。

 料理を心得る者として、かなり欲しかった。


「賞金は!? 賞金はどこいったんや!?」

「賞金があるなんて言っていませんよ」

「そんなー!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ