かれーをつくろう
前回までのあらすじ。
前回の話を読もう!
「ということで、これからカレーライスを作る。料理の心得がある者はいるか?」
「一通りはできる」
「魔法の贄づくりに、たまにやるっす」
「したことないのじゃ」
「なるほど。我も全く経験がない、料理など臣下の仕事だからな。よし、一時指揮権を凡人に預けよう」
「え、俺?」
「何か文句があるか」
「な、ないよ。うん」
王に背中を押されて、前に立つことになった。
正直、レースの時はあまり役に立てなかったため、ここで見せ場を作りたいという気持ちはある。
頭の中でやることを整理し、他のメンバーに振り分けていった。
「じゃあ、帽糸が米の用意で、王が野菜の皮むき、マジッカは具材を切る。俺は全体に教えてから、主にマジッカを手伝う。これでどうだ?」
「いいだろう。では、散れ」
「「はーい」」
グループメンバーは、それぞれの持ち場に散らばっていった。
一番最初に行くのは……割り振った順で、帽糸のところでいいか。
先生から米を受け取って来た帽糸を水道に連れて行き、米洗いの指導をする。
「こう、ジャジャっとして、白く濁った水を捨てるんだ」
「なるほどのう」
「何回か繰り返して、水が濁らなくなったら呼んでくれ」
「分かったのじゃ。……水仕事だから、海坊主のわしに任せたのか?」
「そんなとこだな」
「頭いいのう」
「普通のことだからあんまり褒められた気がしないんだけど……まあ、ありがとう」
帽糸がゆっくりと米をかき混ぜるのを見届けてから、次の現場に向かう。
皮むき場では、ピーラーと野菜を持った王が待っていた。
すでに、他のグループの見よう見まねで皮を剥いている。
「こうであろう?」
「上手いな……。ジャガイモだけ、色が変わってる部分を抉っといてくれ」
「なるほどな」
「できてるやつは持ってくぞ」
「任せた」
さすがというか、飲み込みがメチャクチャ早い。
あの様子なら心配ないだろうということで、マジッカの方に向かった。
王とは違い、彼は俺が来るまで行儀よく待っていた。
「やっと来てくれた」
「遅くなって悪い。それで、どこが分からないんだ?」
「儀式魔法で使うので、包丁の使い方は分かるんっすけど、可食部が分からなくて……どこまでがタマネギの芯かな? とか」
「ああ、それか。全部教えるから、一個ずつやっていこう」
「はいっす!」
後は米を炊くくらいしか教えることがないので、マジッカに教えながら、俺も野菜と鶏肉を切っていく。
包丁を持っていると、ふと思いついた。
「斬撃を飛ばす魔法とかないの?」
「あるっすけど……せっかくだから、自分の手でやろうと思って」
「そういうことね。分かるよ、そうゆうの」
「……」
「どうかしたか? 手が止まってるぞ、マジッカ」
「あ、すみませんっす。あの……スペラって呼んで下さい。マジッカって、あんまり好きじゃないんで」
「マジかーってなるから?」
「……」
「ごめんって! 謝るから包丁持って近づかないで!」
軽く雑談しながら、具材を切っていく。
経験者ということで、スペラの手には淀みがなく、スムーズだった。
「……そういや、米洗い遅いな。ちょっと見てくる」
「分かったっす」
包丁を置いて帽糸を見に行くと、彼女はまだ米を洗っていた。
ゆっくり、ゆっくりと手を動かしている。
チラっと、背後から覗き込んでみた。
「もうできてるじゃん」
「ん? まだ白く濁っておるが」
「完全には無理だから。むしろ、ちょっとやり過ぎというか……」
「そうか……」
「あー! やっぱりこれくらいが丁度よかったかもしれない!」
「そうか」
千歳以上のおばあさんは、無邪気にほほ笑んだ。
……うーん、ちょっとこの人には弱いかもしれない。
容姿が好き過ぎる。
「どうかしたのか?」
「な、何でもない。次のステップに行こう」
遅れているので、手早く釜戸の用意をして、米を炊き始めた。
ちょっと遅れるかもしれないけれど、まあ間に合うだろ。
「次は何をしたらいいかの?」
「やることないな……米を見張っておいてくれ」
「分かったのじゃ」
釜戸の前に体育座りした帽糸を置いて、野菜の切り場に戻ると、王が俺のいた所でタマネギを切っていた。
初心者とは思えない手さばきで、料理人かのように包丁を扱う。
正直、俺より――。
「凡人よ、あっているか?」
「ああ……上手いな。本当に、包丁に触るの初めて?」
「当然だ」
コイツヤベー。
そんなこんなで具材の準備が終わり、残りは炒めてグチャグチャしてカレーにするだけ。
他の人に教えるだけでは消化不良だったため、後は大体全部やった。
「ってことで、完成しましたー!」
「いえーい」
「挨拶は我がやる。いただきます」
「「「いただきます」」」
何の変哲もない、普通のカレー。
学生の手作りということで、不格好なところもあるが、しっかり形になっている。
みんなで同時に一口目をスプーンですくい、口の中に放り込んだ。
「おー、美味しいっすね!」
「我が作ったのだ、当然であろう。自分で作るのも悪くないな」
「食べ足りないのじゃ。もっと作れば良かったのう」
「……よかった」
料理を多少扱った人間として、初めて自分で作ったものを食べて、それを美味しいと感じてくれて、本当によかった。
俺も、自分のカレーに手をつけた。
……なんか、洗い過ぎたせいで米の食感に違和感があるけど、これはこれで新鮮な気がして美味しい気がする。
多分そんな気がする。




