そういえばやってなかった。
「みなさん学校に慣れてきたことでしょうし、そろそろ席替えでもしましょうか」
朝のHRで、先生の一言に湧き上がるクラス。
普段ならば俺も歓迎する楽しいイベントだ。
しかし、俺には歓迎できない理由があった。
「どうしよう三首! お前と離れたら俺死んじゃうよ!」
「大丈夫でござる、きっと何か配慮を――」
「変更は一切許しません。このクジで引いた席で決定です」
スムーズに頭を抱えた。
「先生、それだと俺死にます! 殺されます! せめて三首の近くにして下さい!」
「佐藤君……神に祈りなさい」
「マジで!?」
なんかシスタみたいなこと言い出した……そういえば先生天使だったわ。
隣の三首は既に手を合わせて祈っていたので、俺も諦めて祈ることにした。
えっと、まず一番は三首の近くの席であること。
扉の近くはたまにリッキーが破壊しながら入って来るから論外で……アイツの近くの席だと爆破されるからできるだけ遠ざけて下さい。
できれば――端っこだな、うん。この前将演も端の席だからどうにかなってるって言ってたし。
神様お願いします!
果たして、その結果は――。
「三首いぃ!」
「主殿!」
新しい席になった俺は真っ先に隣の三首と抱き合った。
よかった……マジで死ぬかと思った……。
新しい席は、右隣が三首で左隣は医浪だった。愉快で面白い奴だし、もし怪我しても直してくれる。至れり尽くせりだな。
とはいえ、全部が思い通りにいったわけではなく。
「また前後だね! よろしく!」
「ああ……あんま爆破すんなよ」
「うん!」
クラスの三大問題児、爆破の式織解李が後ろだった。
メカニック高校から来た発明家。よく教室で新しいメカを作ろうとして爆発を引き起こしている。
同じ三大問題児、破壊のストレイン・リッキーと失物の内盗静枷の中でも、危険性では群を抜いている。
何でコイツレンチ持ち歩いてるの? 工業高校じゃねえんだぞ。
「三首、耐火手袋とかいる?」
「だ、大丈夫でござる。分かっていれば火傷などというヘマはもうしないので」
逆に気合を入れて腕を回していた。
……いつもありがとうなぁ。今度何か労ってあげたい。
ま、まあ解李は置いておいて。最前列だから前の生徒はいない。
先生が近い最前列は忌避される風潮があるが、俺にとっては先生に守られやすい席なのでむしろ願ったり叶ったり、
総評、背後だけは気になるけれど、左右は最高、最前列なのも悪くないので、九十点はある席だ。三首が隣なだけで八十はある。
ありがとう神様……。
「では入信を」
「しないよ……。どっから出てきたんだよ」
通りすがりの宗教勧誘は断った。
さて、その他の配置はどうなったのか。
まず……静枷が少し遠いな。アイツの移動距離が増えると、盗って来るものが増えて困るんだけど。
できるだけこっちから近づくようにしよう。
将演は端の席のまま変わってない。……アイツやっぱ結構運いいな。
本の影から見えた自慢げな目がウザかった。
「まあこんなもんか」
「あっ!」
背後から間抜けな声がし……反射的に机に伏せた瞬間、背後で爆発が起きた。
爆発の衝撃とそれによって生まれた破片が襲い掛かってくるかと警戒していたが、いつまで経っても何も起こらないので、振り返るとプラチナの壁がそびえ立っていた。
「土遁、プラチナ壁……言ったでござろう、来るのが分かっていれば火傷などせず防げると」
「さっすが三首!」
「ごめんねー! 今思いついたメカ作ってたら、ミスっちゃった!」
「全く……爆発オチじゃないかって警戒したじゃないか」
「テヘッ! お詫びに昨日作ったタケコ〇ター(試作機)を……あっ!」
ポケットから腕くらいの大きさのプロペラを取り出し――手を滑らせて、落とした。
ピカッ
「結局爆発オチじゃねえか!」
ドオォン!
「ハァ……全く、また解李さんですか。……最前列にした方がよかったですね」
「楽しそうで何よりじゃないですか」
「校長……」
「ようやく計画を進める気になりましたか」
「……試験的に近づけただけです。私の判断ですぐに変えます」
「自分の役割を全うしなくていいのですか? 天使さん」
「……」
「まあいいでしょう。面白いことになりますよ、これからは」
愉快で仕方ない、という様子で校長は教室を出て行った。
改めて溜息をつき、爆発に文句を言う一人の生徒に視線を向けた。




