※ここは日本ではありません
計算が面倒なので、この世界では1ドル=100円です。
「主人殿、朝でござるよ」
「ん、ああ」
三首に体を揺らされ、眠い目を擦りながら起床した。
なんかメチャクチャ眠い。
昨日は――三首を探していて、遅くなったんだった。
眠気で意識が飛びそうになるのを抑えて、無理やり立ち上がる。
「おはよう。待ってろ、今朝飯作るから」
「もう拙者が作ったでござるよ」
言われてみると、食卓からいい匂いがしてきた。
この匂いは……フレンチトーストか。
「朝から豪華な物を」
「気にしないでくだされ、昨日は迷惑をかけたので」
「気にしなくていいんだけど……」
「いいのでござる。いただきます」
「いただきます」
手を合わせて挨拶をしてから、フカフカのフレンチトーストを口に入れた。
「ん、うまいな」
「そうでござろう」
いい食感と甘さで、クセになりそうな味だ。
自然と口と手が速く動き、あっという間に消えていく。
俺が夢中で食べていると、三首は「食べながらでいいのでござるが」と前置きし、話し出した。
「あれから少し考えてみたのでござるが、とりあえず今の生活を続けるでござる」
「そっか」
「ただ、部活には入ってみたくて――スポーツ部にいってみるつもりでござる」
スポーツ部。
体を動かすのが好きな生徒たちが集まって、日替わりで色々なスポーツをする部活だ。
帰る時に校庭で超次元サッカーをしているのを見て、俺は入るのを諦めたが、三首なら上手くやっていけるだろう。
「それで、護衛はできなくなってしまうのでござるが――」
「オッケオッケ。放課後なら大丈夫だろ」
「感謝するでござる」
軽く礼をして、フレンチトーストを食べる三首。
ふと、彼女の頰に卵の白身がついていることに気づいた。
「なんか付いてるぞ」
拭いてやろうと手を伸ばし――三首にオーバーに避けられた。
「た、確かに何かついているでござるな。失敬失敬」
「……」
気のせいかと、再度手を伸ばすも、それも避けられた。
「三首さん?」
「何でもないでござるよ」
「でも――」
「いつもより遅れているでござるよ。早く準備するでござる」
早口で言った後、自分の部屋に引っ込んでいってしまった。
何かあったのだろうか。
顔もいつもより赤かった気がするし。
疑問を抱きながらも、俺もさっさと朝の支度をしてしまうことにした。
歩いて十数分。
俺たちは登校し、教室に着いた。
何かあったのだろうか。一つの机に、人だかりができていた。
「レイズ、100ドルだ」
「コールです」
人だかりの中央の机に座っているのは、賭博学校から来たギャンブラー、ゲイズ・ギャンフ。
そして、その対面にいるのは我らが先生だった。
「では、カードオープン!」
ディーラーの王の掛け声と共に、カードが表向きになり――ギャンフが3とジャックのツーペア、先生は9のペアだった。
「惜しかったっな」
机上に広げられていた数百ドルの札束が、全てギャンフの手元に寄せられた。
コイツら、賭けポーカーしてやがる。
※ここは日本ではありません、って書いとかないと。
「私の一ヶ月分の給料が……」
項垂れる先生を尻目に、観戦していた適当なヤツ、医浪に話を聞いてみる。
「何があったんだ、これ」
「誠一やん。実はな、ウチが金がないーって騒いどったら、ギャンフがポーカーで稼がしてやるって言い出してな」
「……それで?」
「なけなしの金を全部奪われたわ。そんで、ウチ以外にもギャンフに挑んでは有り金全部持ってかれて、見かねた先生がお仕置きしようとしとったんやけど」
医浪は教室の隅で小さくなっている天上先生を一瞥した。
アナタそんなキャラでしたっけ?
俺は関わるまいと離れようとしたが、新たなカモを探していたギャンフに、目を付けられてしまった。
「誠一君じゃないか。ポーカーやろうぜ」
「……やだよ。絶対負けるもん」
「そんなこと言わないでくれ。友達料金で、レートは三倍にするぜ」
「それってどういうこと?」
「誠一君が10ドル、俺が30ドルで賭けが成立するってことだ」
フム。それなら十分勝ち目はあるのではないか?
流石に相手に三倍かけさせてボロ負けすることはないだろう。
まあ……10ドルだけ。
これなら無くなってもまあいいや。
「じゃあ、やろうかな」
「やる気になってくれたか。参加費は10ドルだぜ」
「分かった」
財布から10ドル札を出して、机に置いた。
ギャンフも、札束の山から30ドルを出し、机に置く。
「では、カードを配ろう」
王がカードをシャッフルし、一枚づつ交互に配っていく。
俺の手札に来たカードは……♡3、♧8、♧K、♤K、♡Kの5枚、できた役は――キングのスリーカード。
あまりやったことはないが、コレは結構強いのではないか?
「レイズ、60ドル。そして、二枚カード交換するぜ」
俺が内心でほくそ笑んでいる間に、ギャンフが賭け金を上げた。
もしかして、強い札なのか?
いや、キングのスリーカードよりは強くないだろう。
さっきの10ドルしか賭けないという自分との約束は破ることになってしまうが――。
「コール」
「カード交換はしなくていいのか?」
「あ、じゃあ二枚」
財布から追加で10ドル札を取り出した。
ついでに二枚カードを交換し、最後のキングが来ないかと期待したが、そう上手くはいかず。
結局役はキングのスリーカードになった。
一般人ならいざ知らず、ギャンフ相手だと怖いところではあるが。
「では、カードオープン!」
お互いのカードが露わになり――ギャンフは何の役も揃っていない、ブタだった。
俺はキングのスリーカードが揃っていたため、あっさりと俺の勝利になる。
「やるな。レイズしたら怯えて降りると思ったが、そんなに強い役だとは思わなかったぜ」
ギャンフは俺を称賛しつつ、賭けていた60ドルを俺に渡した。
俺の20ドルが、いつの間にか80ドルになっている。
「よし、次だ。次は絶対に勝つぜ!」
「お、おう」
参加費を払い、次のゲームに――入ってしまった。
思えば俺は、この時点で負けていたのだ。
「レイズ300ドル」
「え……俺もうオールインなんだけど」
「まだ残ってるだろ、財布の中に」
「ッ――コール!」
俺は、財布から残りの30ドルを叩きつけ、
「ってことで一文無しになりました」
「どうしてそこで財布の中まで出すことになるのでござる」
「なんか勝てると思っちゃって」
今振り返ると、そうなるように仕向けていたんだろうな。
熱くなって結局有り金全部突っ込んでしまった。
やっぱ賭けってダメだわ。
「他にやりたい奴はいないのか?」
今回俺がレート三倍で惨敗したのを見ていたのだ、もう挑むヤツはいないだろう。
そう思っていた俺の横を、一人の少女が通り抜けた。
「私がお相手しましょう」
筆者はそんなにポーカーに詳しいわけではないので、ガバがあっても許して下さい。




