けーおん‼
頂天学校。
一つの分野に精通した天才のみが通う、異質な学校だ。
当然、普通の高校とは違う点がいくつもある。
入学は高校二年からだし、隔離するために専用の島が用意されて、普通に通っているだけなのに給付金まで出る。
しかし、高校生にとって一番大事なアレは、存在していた。
部活動。
一学年につき一クラスのみ、全校生徒で約六十人程度しか在籍しておらず、人数が少なすぎるので無いと思っていたのだが、少し変わった形で存在しているらしい。
具体的に言うと、体育系のクラブが全部一つにまとめられていた。
比較的必要人数が少ないバスケットボールでも、試合を成立させるには十人いる。これは全校生徒の六分の一だ。
こうして人数不足を補うため、日替わりでいろいろなスポーツをしているらしい。
他にも色々統合されたりしているが、俺が入りたい部活は必要人数が少ないためか、普通にあった。
「どうするでござるか、主殿」
「軽音にいく」
「軽音ですか……楽器とかしたことあるんですか?」
「いや、小学校のリコーダーくらいしかない。まあ、ポスターに未経験者歓迎って書いてるしいけるだろ。二人はどうする?」
「付いていくでござる」
「私も」
と、いうことで、俺、三首、静枷の三人で軽音学部の体験入部に行くことになった。
階段を登り、普段は行かない学校の隅っこにある音楽室へ向かう。
「どうして軽音なのでござるか?」
「隕石を見て分かったんだ。俺って軽音がしたかったんだって」
「どういうことですか?」
そんなことを言っているうちに、軽快な音楽が聞こえてきた。
ドラムと――ベースだろうか。よく分からないけど、結構上手だと思う。
それだけに、音楽室の扉には重厚感を感じたが、勇気を出して開いた。
中にいたのは……男の先輩と女の先輩が一人ずつ。
猫背が印象的な、赤黒い髪で目を隠した男の先輩がドラムを叩き、どこかやわらかくて優しい印象がある女の先輩がベースを弾いていた。
「お、新入生か」
「やった、三人もいる! 入って入ってー!」
「おじゃまします」
友好的な先輩たちに導かれるまま音楽室に入り、並べられた椅子に座った。
その後、何をするか決めていなかったとあわあわ戸惑うベースの先輩を放って、ドラムをしていた先輩が話し始めた。
「じゃあ、自己紹介しよう。俺は二年の來間車林。運転学校出身で、今はドラムをやっている。運転は得意だから、入部してくれたら足は出すぞ」
軽音部だから、音楽関係の人かと思っていたが、全然違った。
猫背で分かりにくいけれど、かなり背が高く、怖い雰囲気がするのでちょっと近づきづらい。
「次は私だね! 私は柔院唯、看護学校からきたベーシストだよ。マッサージとか得意だから、あとでしてあげるね。あ、あと二年生だよ」
次に自己紹介したのは、優しそうな女の先輩だった。
できればこっちと仲良くしたい。
新入生側も自己紹介を終えて、本格的に体験入部が始まった。
「やりたい楽器とかあるか? 大体は置いてあるから、遠慮なく言うといい」
「俺は――ギターで、お願いします」
「分かった」
「私はキーボードがいいです」
「キーボード……私たちはあんまり教えられないけど、大丈夫かな?」
「はい。ピアノなら弾けるので」
「え、初耳なんだけど」
スマホでリズムゲーをしていたのは見たことがあるが、ピアノまでしたことがあるとは思わなかった。
「窃盗学校では、盗む物の価値を見極めるために芸術系は一通り触れるんですよ」
「へー」
「あと、家にグランドピアノがあるので」
「……それどこから盗って来たんだよ」
「勘のいい人は好きですよ」
静枷は微笑みかけてきたが、余裕で無視した。
「三首はどうする?」
「拙者は大丈夫でござる」
「大丈夫って――」
「主殿に付いてきただけで、入部する気は無いのでござる。気にしないでくだされ」
それだけ言うと、どこかに消えてしまった。
俺を守れる場所にいるとは思うのだが――
「……すみません、ちょっと変わった奴で――」
「まあいい。とりあえず、ギターとベースだな」
來間先輩が準備室に引っ込んだかと思うと、ベースとギター、さらにアンプなどの備品まで一度に持ってきた。
ち、力持ちだなぁ。
「じゃあ、俺がキーボード見るから、柔院はギターみてくれ」
「はーい。よろしくね」
「よ、よろしくお願いします」
教えてくれる柔院先輩に挨拶して、ギターを握った。
アンプを繋いで、とりあえず音を鳴らしてみる。
久しぶりだけど、いい感じの音が鳴った。
「んん、経験者だった?」
「家でちょっとだけ……でも、Fコードができなくて断念しました」
「分かる分かる、私もそうだったから」
首を振ってメチャクチャ同意してくれた。
「でも大丈夫、ベースやってたら、Fコードも少しはできるようになったから」
「そういうものですか?」
「うん。まず、ここを持って――」
先輩は、文字通り手取り足取り教えてくれた。
今までは調べながら自己流で練習していたのだが、人から教えて貰えると飲み込みが違う。
「飲み込み早いね。いい子いい子」
「結構やるな」
順調に練習していると、來間先輩も顔を出した。
「どうしたの、くるくる?」
「教えることがないから、こっち来た」
チラっと見てみると、流暢にリズムゲームの曲を弾く静枷の姿があった。
かなり上手い、手が分身して見える。
まあ、手先が器用な奴だからな。スリ上手いし。
ただ、あっても俺と同じくらいの腕前だと思っていたから、ちょっとショックではある。
追いつけるように、さらに練習に気合が入った。
「んー。先輩、このコードってどうやったらいいんですか?」
「どれどれー? これは……どうするんだろう? おじいちゃんは分かる?」
「分からん。ちょっと調べてみる」
來間先輩は首を捻りながら、検索エンジンを開いた。
「おじいちゃん……?」
「車林のあだ名だよ。なんか、言動がおじいちゃんっぽいんだよね」
「はあ」
確かに、スマホを人差し指でポチポチ操作しているのを見ると、あだ名に説得力があった。
これはもう少しかかりそうだ。
「ごめんね、私たちは自分の楽器しかできないから、あんまり上手く教えられないや」
「そんなことないですよ。かなり助かってます」
「いやー。去年までは音楽学校から来た先輩が、全部教えてくれたんだけどね。けど、私たちだからできることもある」
その時、学校のチャイムが鳴った。
こんな時間まで学校にいたことが無いので知らなかったが、学校を完全に閉めるチャイムらしい。
「今日はここまでかな。来てくれてありがとうね」
「こっちこそ、教えてくれてありがとうございます」
「疲れただろうし、マッサージしてあげるね」
そう言って、柔院先輩は後ろに周り、俺の肩を掴んだ。
「お、結構凝ってんねー。よいしょっと」
瞬間、肩が消えた。
なんだこれ。肩が無い。
さっきまでも特段疲れているつもりはなかったのに、今はなんというか、逆に生きている気がしない。
「あらよっと」
また肩を揉んだかと思うと、今度は全身から疲労という疲労が消えた。
もう、なにも、かんじない。
「さらに――」
「やめとけ。これ以上は死ぬぞ」
柔院先輩はまだ続けるつもりらしかったが、來間先輩が止めてくれた。
その隙に、俺は命からがら飛び出して、來間先輩の後ろに隠れる。
あぶない、マジで逝くかと思った。
というか、感覚的にはもう死んでた。
「ちょっと気合入れすぎちゃったかな? 痛かった?」
そう言って、俺を殺しかけた張本人は笑い、俺は異常なほど調子がいい身体で逃げ出した。
短編が完結したので帰ってきました。
今後も短編書き出したら更新止まると思う。どうかご容赦を……。
正直、ギャグ作品だから不定期でいいと思ってる。
高評価してくれたら、多分更新頻度と作者のやる気が上がるよ。




