表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
14/25

けーおん‼

 頂天学校。

 一つの分野に精通した天才のみが通う、異質な学校だ。

 当然、普通の高校とは違う点がいくつもある。

 入学は高校二年からだし、隔離するために専用の島が用意されて、普通に通っているだけなのに給付金まで出る。

 しかし、高校生にとって一番大事なアレは、存在していた。


 部活動。

 一学年につき一クラスのみ、全校生徒で約六十人程度しか在籍しておらず、人数が少なすぎるので無いと思っていたのだが、少し変わった形で存在しているらしい。

 具体的に言うと、体育系のクラブが全部一つにまとめられていた。

 比較的必要人数が少ないバスケットボールでも、試合を成立させるには十人いる。これは全校生徒の六分の一だ。

 こうして人数不足を補うため、日替わりでいろいろなスポーツをしているらしい。

 他にも色々統合されたりしているが、俺が入りたい部活は必要人数が少ないためか、普通にあった。


「どうするでござるか、主殿」

「軽音にいく」

「軽音ですか……楽器とかしたことあるんですか?」

「いや、小学校のリコーダーくらいしかない。まあ、ポスターに未経験者歓迎って書いてるしいけるだろ。二人はどうする?」

「付いていくでござる」

「私も」


 と、いうことで、俺、三首、静枷の三人で軽音学部の体験入部に行くことになった。

 階段を登り、普段は行かない学校の隅っこにある音楽室へ向かう。


「どうして軽音なのでござるか?」

「隕石を見て分かったんだ。俺って軽音がしたかったんだって」

「どういうことですか?」


 そんなことを言っているうちに、軽快な音楽が聞こえてきた。

 ドラムと――ベースだろうか。よく分からないけど、結構上手だと思う。

 それだけに、音楽室の扉には重厚感を感じたが、勇気を出して開いた。


 中にいたのは……男の先輩と女の先輩が一人ずつ。

 猫背が印象的な、赤黒い髪で目を隠した男の先輩がドラムを叩き、どこかやわらかくて優しい印象がある女の先輩がベースを弾いていた。


「お、新入生か」

「やった、三人もいる! 入って入ってー!」

「おじゃまします」


 友好的な先輩たちに導かれるまま音楽室に入り、並べられた椅子に座った。

 その後、何をするか決めていなかったとあわあわ戸惑うベースの先輩を放って、ドラムをしていた先輩が話し始めた。


「じゃあ、自己紹介しよう。俺は二年の來間車林。運転学校出身で、今はドラムをやっている。運転は得意だから、入部してくれたら足は出すぞ」


 軽音部だから、音楽関係の人かと思っていたが、全然違った。

 猫背で分かりにくいけれど、かなり背が高く、怖い雰囲気がするのでちょっと近づきづらい。


「次は私だね! 私は柔院唯、看護学校からきたベーシストだよ。マッサージとか得意だから、あとでしてあげるね。あ、あと二年生だよ」


 次に自己紹介したのは、優しそうな女の先輩だった。

 できればこっちと仲良くしたい。


 新入生側も自己紹介を終えて、本格的に体験入部が始まった。


「やりたい楽器とかあるか? 大体は置いてあるから、遠慮なく言うといい」

「俺は――ギターで、お願いします」

「分かった」

「私はキーボードがいいです」

「キーボード……私たちはあんまり教えられないけど、大丈夫かな?」

「はい。ピアノなら弾けるので」

「え、初耳なんだけど」


 スマホでリズムゲーをしていたのは見たことがあるが、ピアノまでしたことがあるとは思わなかった。


「窃盗学校では、盗む物の価値を見極めるために芸術系は一通り触れるんですよ」

「へー」

「あと、家にグランドピアノがあるので」

「……それどこから盗って来たんだよ」

「勘のいい人は好きですよ」


 静枷は微笑みかけてきたが、余裕で無視した。


「三首はどうする?」

「拙者は大丈夫でござる」

「大丈夫って――」

「主殿に付いてきただけで、入部する気は無いのでござる。気にしないでくだされ」


 それだけ言うと、どこかに消えてしまった。

 俺を守れる場所にいるとは思うのだが――


「……すみません、ちょっと変わった奴で――」

「まあいい。とりあえず、ギターとベースだな」


 來間先輩が準備室に引っ込んだかと思うと、ベースとギター、さらにアンプなどの備品まで一度に持ってきた。

 ち、力持ちだなぁ。


「じゃあ、俺がキーボード見るから、柔院はギターみてくれ」

「はーい。よろしくね」

「よ、よろしくお願いします」


 教えてくれる柔院先輩に挨拶して、ギターを握った。

 アンプを繋いで、とりあえず音を鳴らしてみる。

 久しぶりだけど、いい感じの音が鳴った。


「んん、経験者だった?」

「家でちょっとだけ……でも、Fコードができなくて断念しました」

「分かる分かる、私もそうだったから」


 首を振ってメチャクチャ同意してくれた。


「でも大丈夫、ベースやってたら、Fコードも少しはできるようになったから」

「そういうものですか?」

「うん。まず、ここを持って――」


 先輩は、文字通り手取り足取り教えてくれた。

 今までは調べながら自己流で練習していたのだが、人から教えて貰えると飲み込みが違う。


「飲み込み早いね。いい子いい子」

「結構やるな」


 順調に練習していると、來間先輩も顔を出した。


「どうしたの、くるくる?」

「教えることがないから、こっち来た」


 チラっと見てみると、流暢にリズムゲームの曲を弾く静枷の姿があった。

 かなり上手い、手が分身して見える。

 まあ、手先が器用な奴だからな。スリ上手いし。

 ただ、あっても俺と同じくらいの腕前だと思っていたから、ちょっとショックではある。

 追いつけるように、さらに練習に気合が入った。


「んー。先輩、このコードってどうやったらいいんですか?」

「どれどれー? これは……どうするんだろう? おじいちゃんは分かる?」

「分からん。ちょっと調べてみる」


 來間先輩は首を捻りながら、検索エンジンを開いた。


「おじいちゃん……?」

「車林のあだ名だよ。なんか、言動がおじいちゃんっぽいんだよね」

「はあ」


 確かに、スマホを人差し指でポチポチ操作しているのを見ると、あだ名に説得力があった。

 これはもう少しかかりそうだ。


「ごめんね、私たちは自分の楽器しかできないから、あんまり上手く教えられないや」

「そんなことないですよ。かなり助かってます」

「いやー。去年までは音楽学校から来た先輩が、全部教えてくれたんだけどね。けど、私たちだからできることもある」


 その時、学校のチャイムが鳴った。

 こんな時間まで学校にいたことが無いので知らなかったが、学校を完全に閉めるチャイムらしい。


「今日はここまでかな。来てくれてありがとうね」

「こっちこそ、教えてくれてありがとうございます」

「疲れただろうし、マッサージしてあげるね」


 そう言って、柔院先輩は後ろに周り、俺の肩を掴んだ。


「お、結構凝ってんねー。よいしょっと」


 瞬間、肩が消えた。

 なんだこれ。肩が無い。

 さっきまでも特段疲れているつもりはなかったのに、今はなんというか、逆に生きている気がしない。


「あらよっと」


 また肩を揉んだかと思うと、今度は全身から疲労という疲労が消えた。

 もう、なにも、かんじない。


「さらに――」

「やめとけ。これ以上は死ぬぞ」


 柔院先輩はまだ続けるつもりらしかったが、來間先輩が止めてくれた。

 その隙に、俺は命からがら飛び出して、來間先輩の後ろに隠れる。

 あぶない、マジで逝くかと思った。

 というか、感覚的にはもう死んでた。


「ちょっと気合入れすぎちゃったかな? 痛かった?」


 そう言って、俺を殺しかけた張本人は笑い、俺は異常なほど調子がいい身体で逃げ出した。


 短編が完結したので帰ってきました。

 今後も短編書き出したら更新止まると思う。どうかご容赦を……。

 正直、ギャグ作品だから不定期でいいと思ってる。

 高評価してくれたら、多分更新頻度と作者のやる気が上がるよ。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ