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第十一章 樹海
白く乾いた光が差し込む廊下。
リョウは病室の前に立ち、ガラス越しにアキラの姿を見つめていた。
アキラは酸素マスクをつけ、点滴に繋がれたままベッドに横たわっている。
その目は半開きだが、何も見ていないかのように虚ろだった。
リョウは拳を強く握りしめ、看護師に詰め寄る。
「頼む、少しだけでも……! 声だけでもかけさせてくれ!」
しかし、看護師は首を横に振った。
「今は面会できません。彼にとっても危険です。
ご家族以外の面会も、医師の許可が下りない限りは……」
リョウは、食い下がることもできず、その場に立ち尽くした。
視界が滲み、足元がぐらつく。
しばらくその場で動けずにいたが、やがて、力なく背を向け、病室を後にした。
夜。
無理やり体を起こしたリョウは、着替えを引きずるようにして病院を抜け出した。
かろうじて持っていたスマートフォンを頼りに、タクシーを拾う。
行き先を告げる声はかすれ、震えていた。
「青木ヶ原樹海……入口まで」
運転手が怪訝そうな顔をしたが、何も言わず車を走らせた。
リョウの瞳には、アキラの虚ろな目が焼き付いている。
あのまま、何もできずに終わるわけにはいかない。
自分たちをこんな目に遭わせた”何か”を、この目で確かめなければならない。
かすかな動悸と吐き気を堪えながら、リョウは夜の闇へ向かっていった。




