第十章 アキラ
高速道路を走る車内。夕暮れの光がフロントガラスを薄く染め、ラジオの音が低く流れている。
加納が運転席、長谷は助手席で、さっきまでの宮田の話をそれぞれ整理していた。
長谷が口を開く。
「……あの話、どこまで信じる?」
加納は前を見つめたまま、低く答える。
「正直、全部とは言わねぇ。だが――
“消えた死体”の話が、今の事件と重なってるのは事実だ」
「落雷で死んだはずの囚人が、遺体安置室から消えて、
数十年後に似たような死体が樹海で見つかる……偶然で片付けたら、何も見えなくなる」
長谷は腕を組んで、うなずいた。
「宮田さんも、嘘をついてる感じじゃなかった。
信じたくないだけ、って顔だった」
車内に短い沈黙が流れたその時――
ザーッ……
突如として無線から雑音が混じり、その後、切羽詰まった声が響いた。
『こちら現地本部、至急応答願います――
一名、行方不明者と思しき人物を発見。
状態は……かなり悪い。意識不明。救護班を手配済み。』
加納がすぐにハンドルを握り直し、アクセルを踏み込んだ。
「誰だ、見つかったのは誰なんだ?」
無線が少し間を置いてから答えた。
『身元は所持品と服装から“アキラ”と思われます。
詳細はまだ未確認。現在、搬送準備中――』
長谷が小さく呻いた。
「……やっぱり、生きてたのか」
「いや」加納の声が低くなる。「“まだ”生きてる、だ」
外の風景が赤く滲む中、車は加速を続けた。




