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第八章 過去を知るもの1
応接室を出た二人。
加納は無言で煙草に手を伸ばしかけ、長谷が軽く肩を叩く。
「……無理に吸うと余計イラつくぞ」
加納が苦笑する。
その背後――廊下をすれ違った一人の初老の職員が、足を止める。
「……あの話、まだ残ってたんだな」
加納が振り返ると、その男は名札を胸元に着けていた。
「笹川 元刑事課長」
すでに現場を退いた立場だが、当時は多くの凶悪事件を捜査していたと聞く。
「“J”のこと、だろう?」
加納と長谷は目を見合わせる。
「あんた……知ってるんですか?」
「あれは……表に出ないようになってる。いや、出せなかった。
俺じゃない。当時、遺体の処理に関わった“人間”がいる。名前は……たしか――」
笹川は記憶を辿るように、ゆっくりと目を閉じた。
「“宮田”って名の技師だった。今はもう退職してるが、埼玉の方にいるはずだ」
「連絡を取ってみる価値はある。
もし、まだ……話す気があるならな」




