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サライちゃん出産と大家さんとの出会い

東の館にて老女によるイリュージョン。


大家さんは助手としては凄く優秀。しかしどうも勝手に動くところがあって困る。


若い助手も問題は起こすがこちらの想像の範囲内だから何とでもなる。


大家さんは想像の遥か先を行くからコントロールできない。


まあする気もあっちだってされる気もないだろうが。自由にさせるのが一番。


それで助けになるならいい。事件解決に導くならなおいい。


だが今回はどうなのか? 不安になる。



「イリュージョン」


大家は立ち上がると体を動かし再びサライちゃん人形と対峙する。


どうやらぎっくり腰にはなってないようだ。


ただこのまま任せていいものか。老人の冷や水にならなければいいが。


大家は人形を持ち上げようとはせず横にずらす。


たったそれだけのことで暗示に掛ったかのようにサライちゃんが動く。


うん? うん? 一体何が起きた?

 

まさしくイリュージョン。



パチパチ

パチパチ


何が何だか理解できずに反射的に手を叩く。


いつの間にかサライちゃんはこちらを睨んでいた。


僅かに動かしたことで起きた変化。門番の証言通り。


僅かとは言え男二人がかりでもびくともしなかったものをいかに動かしたのか。


ハンドパワー? 超常現象? ポルターガイスト?


秘密のベールに包まれた東の館はついにその正体を現した。



「もういいよ。出ておいで」


まずいこれはボケてしまったか?


それともサライちゃんに話しかけているとでも……


とにかく様子を見守るしかない。


ブツブツ独り言を続ける大家さん。


イリュージョンとは何だろう?



サライちゃんから人が? 人が? 人が?


出産シーンに立ち会う。


いやそんはずはない。目の錯覚に違いない。


目はいい方だが逆に見えてはいけないものが見えることもある。


いや本当に人がニョロニョロと。


人とも思えない動き。



うわああ。


つい大声を出してしまう。


「どうしたんですか先生。怯えないでくださいよ」


笑顔で近づく大家さんとサライちゃん?


「いやでも…… 人みたいなものが出て来たから」


まずいな地下牢が堪えたか。見てはいけないものが見える。


落ち着け。落ち着くんだ自分。


探偵だぞ。探偵がこの程度のことで我を失ってどうする。


ほらこれは大家さんの暗示にかかっただけだ。


イリュージョンとはそう言うこと。



「先生。先生」


「大丈夫。大丈夫。私は大丈夫。おかしくない」


「はあ…… 見えてるんですよね。別に何の問題もありませんが」


大家さんはあちらの世界の住人。


私を引き込もうとしている。


「悪霊退散。サライちゃんどっかに行ってくれ」


これはもはや自分の手には余る事象。


大家さんに全て任せよう。



大家さんは自信満々だ。すべての謎が解けたんだろう。


そう言えばあの時もそうだった。


大家さんと出会った日のことを思いだす。



コーヒーショップで優雅なひと時を過ごしていると突然話しかけられる。


「あんたそれでいいのかい? 」


随分失礼なおばさんだとその時は思った。でも違った。


すべてを見抜いていた。その眼で。探偵としての眼力で。


「あんた住むところを探してるね」


ずばっと言い当てる老女。


先月でマンションを追い出された。


ついでに始めたばかりの事務所も家賃が払えず整理することに。


今はその準備が終わり一息ついていたところ。



「ねえ、あんたこれかい? 」


何かを疑っている様子。


「すいません急ぐもので」


コーヒーを飲み干して出ようとするが。


アチチ……


まだ熱くひっくり返してしまう。


うわああ。


やってしまった……


結局服は濡れるし周りの女性客からは笑われるしで踏んだり蹴ったり。


今日は厄日に違いない。


「ほら拭きな。まったく子供じゃないんだから」


お婆さんにまで心配される始末。もう完全に心が折れてしまう。


折角のお気に入りのお店がお婆さんの出現といつものドジで行きづらくなる。



「なあ、あんた」


店を出てもしつこく追いかけてくるお婆さん。


これ以上付きまとわれては迷惑。


まさかあの筋の人からの依頼を受けての嫌がらせ?


いやいや…… まさかね。


老女の追及をかわすため駆け出す。


                 続く

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